吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年10月

【Disc Review】“Amazon River” (1993) Wanda Sa & Celia Vaz

“Amazon River” (1993) Wanda Sa & Celia Vaz
Célia Vaz, Wanda Sá (Vocals, Guitar)
Gal Costa, Joyce, Marcio Malard, Nana Caymmi, Quarteto Em Cy (Vocals) Reginaldo Vargas (Percussion)

ブラジレイラス (BOM17008L)
ワンダ・サー & セリア・ヴァス



 ボサノバを歌う女性ボーカリストはいったい何人ぐらいいるのでしょう?
 古今東西合わせれば10万人?100万人?1000万人?・・・
 その頂点の人たち、ベテランのビッグネームが集まった企画アルバム。
 鳥の声なども絡めながらの楽園サウンド。
 安易な企画と疑うことなかれ、これが素晴らしいアルバム。
 歌いつくされ、演奏しつくされた楽曲、ギターとパーカッションのみのシンプルなサポート、奇をてらうことのないアレンジ。
 それでも全曲名曲、名演、名唱。普通に豪華な編成、アレンジではなく、シンプルなのがカッコよさの決め手なのかもしれません。
 主役のボーカリストが入れ替わり立ち替わりでも、サウンドイメージは一貫性しています。
 とても優雅な歌、コーラス。
 あくまでさりげない音がなんとも言えないカッコよさ。
 やはりこのあたりの人たちには、巧拙とか年齢とか何とかを超えた何かがあるんでしょうねえ。
 何か持っている人たちによる素敵なボサノバ・ボーカルアルバム。




posted by H.A.

【Disc Review】“Brasil '65” (1965) The Sérgio Mendes Trio, Wanda De Sah, Rosinha De Valenca

“Brasil '65” (1965) The Sérgio Mendes Trio, Wanda De Sah, Rosinha De Valenca
Sérgio Mendes (Piano) Wanda De Sah (Vocals) Rosinha De Valenca (Guitar)
Sebastião Neto (Bass) Chico Batera (Drums) Bud Shank (Flute, Sax)

ブラジル’65
セルジオ・メンデス・トリオ~ワンダ・ヂ・サー



 Sérgio Mendes、Wanda De Sahを半数の曲でフィーチャーしたアルバム。
 ジャズファンからすれば“Getz/Gilberto” (1963)の方が馴染みがあり、Sérgio Mendesを好まない人もいるのかもしれません。
 が、タイプは違えど、こちらもアメリカ制作ジャズサンバの名作。
 沈んだ凄み、湿り気のある“Getz/Gilberto”に対して、乾いた質感の本作。
 こちらの方が本場のムードには近いのでしょう。
 Sérgio Mendesとしてもこの作品がアメリカ進出の端緒だったのでしょうかね?
 Jobimナンバーはもちろん、キャッチーな曲を選りすぐったような、今から見ればベタベタな選曲。
 どこかで聞いたメロディ揃い。
 Wanda De Sahはいつも通りのハスキーな声で淡々とした歌。
 神様Joao Gilbertoと比べても仕方ないのですが、同じような沈んだムード。
 かわいらしい云々だけでなく、どことなく凄みが漂っているような気もします。 
 もう一人のフィーチャリングアーティストRosinha De Valencaのギターもタメを活かしたしっとり系。
 Sérgio Mendesのピアノもそれにつられたかどうか、少し沈んだ面持ち、淡々としたビート。
 Bud Shankのサックスだけが明るく元気です。
 気のせいなのかもしれませんが・・・ 
 といったところで、明るく元気になりすぎないジャズサンバ、素晴らしいコラボレーション。




posted by H.A.

【Disc Review】“Softly!” (1965) Wanda De Sah

“Softly!” (1965) Wanda De Sah
Wanda De Sah (Vocals)
Sérgio Mendes (Piano) Rosinha De Valenca (Guitar) Sebastião Neto (Bass) Chico Batera (Drums) and Orchestra

Softly!
Wanda De Sah
Rev-Ola
ワンダ・サー


 Wanda Sá、優雅この上ないオーケストラを背景にしたボサノバ~ポップスアルバム。
 “Wanda Vagamente” (1964)はブラジル制作だと思いますが、こちらはアメリカ西海岸での録音、アメリカのレーベルでの制作。
 “Brasil '65” (1965) Sérgio Mendesと連続するセッションでしょう。
 いかにもあの時代の西海岸のオーケストラサウンド。
 とても優雅でノスタルジックなストリングスと、軽快なSérgio Mendesのジャズサンババンドを背景にした優雅な歌。
 ジャズ、ポップス系の人だとベタベタで艶っぽい感じの作品が多いのでしょうが、本作はあくまで爽やか。
 淡々とした歌、軽快なコンボ、少々ベタッとしたロマンチックなオーケストラの絶妙な組み合わせ。
 これはまさに桃源郷。
 この手の作品、他にもたくさんあり、大仰で時代を感じさせるものが少なくありませんが、本作はあくまでナチュラル。
 ノスタルジックだけども、あくまで上品。
 Sérgio Mendesの存在も大きいのでしょう。
 歌の後ろで低く鳴るコロコロと転がるようなオブリガードのカッコいいこと。
 また、ボーカルも可憐なようで、ハスキーで少し沈み気味のムード。
 意図したものかどうかはさておき、それがなんとも言えない深みに繋がっているようにも思います。
 とても優雅な別世界にトリップさせてくれる音。




posted by H.A.

【Disc Review】“Wanda Vagamente” (1964) Wanda Sá

“Wanda Vagamente” (1964) Wanda Sá
Wanda Sá (Vocal)
Manuel Gusmao, Octavio Bailly Jr, Sergio Barroso (Acoustic Bass) Dom Um Romao, Edison Machado, João Palma (Drums) Henri Ackselrud (Flute) Celso Brando, Roberto Menescal (Guitar) Eumir Deodato, Luiz Carlos Vinhas, Tenorio Jr. (Piano) Pedro Paulo (Trumpet) Ugo Marotta (Vibraphone) and others



 ボサノバの聖典、なのでしょう。
 あくまで個人的な見解ですが、このアルバムはボサノバとジャズの分水嶺。
 一ジャズファンから見れば、ボサノバ、ブラジル音楽の魔境への入り口のように思います。
 ほとんどのジャズファンからすれば、“Getz/Gilberto” (1963)への抵抗はないと思いますが、このアルバムは?な人も少なくないのでは・・・?
 歌い方や巧拙は好みの問題も大きいのでさておいて、おそらくポップに過ぎるメロディライン、アレンジだから。
 特に一曲目。
 ここさえ切り抜ければ、後は少々ジャズっぽくもあるし、演奏もいいし、とても優雅なブラジル音楽~本場のボサノバワールド。
 慣れてしまえば一曲目もこれしかないように思えてきます。
 また、この人の歌、不安定だし、ルックスも含めて単なるアイドルのように思えるかもしれないけども、よく聞くと何だか沈んだ感じで、深いものを感じてしまいます。
 もう一人のアイドル、Astrad Gilbertoも然り。
 単にブラジル人の好みなのか、もっと深いものがあるのか・・・
 まあ、前者でしょうかね・・・?
 汗が飛び散るような強烈でエキサイティングな音や、ECMのような深刻な音もいいのですが、こちらの音は大らかで優雅。
 ってな感じでコアなジャズ好きの人も、気持ちの清涼剤にお試しください。
 ここを抜ければ、待っているのは桃源郷。
 あるいはジャズよりももっとたちの悪い魔境なのかもしれませんが・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Mingus” (1978-1979) Joni Mitchell

“Mingus” (1978-1979) Joni Mitchell
Joni Mitchell (guitar, vocals)
Jaco Pastorius (bass) Wayne Shorter (soprano saxophone) Herbie Hancock (electric piano) Peter Erskine (drums) Don Alias (congas) Emil Richards (percussion)
 
ミンガス
ジョニ・ミッチェル
ワーナーミュージック・ジャパン
2013-07-24

 Joni Mitchell、大名作”Don Juan's Reckless Daughter” (1977)に続く、スーパーフュージョンミュージシャンを従えたCharles Mingusトリビュートアルバム。
 バンドの軸はもちろん Jaco Pastoriusですが、キーボードがJoe Zawinulに変わるとWeather Reportになってしまう凄いメンバー。
 “Mr. Gone” (May.1978)、“8:30” (Nov.1978-1979) Weather Reportと同時期ですので、ちょうどJaco、Weather Reportともに絶頂期。
 と、興味は尽きないのですが、もちろん内容はWeather Report的ではないJoni Mitchellの世界、ジャズ寄りの音。
 ”Don Juan's Reckless Daughte”と比べると、淡い色合いで、少しビート感が弱い感じもします。
 しっとりとした曲、ジャズ寄りの曲が中心で、あの恐ろしくカッコいいJoni MitchellのギターのカッティングとJaco Pastoriusのベースとの絡みの場面が短いから、さらにミキシングの違いなのかもしれません。
 その分、最高のジャズ、フュージョンバンドの最高の演奏がたっぷり聞けるので贅沢は言えません。
 Jaco Pastoriusはもちろん、Herbie HancockもWayne Shorterも説明無用のカッコいい演奏。 
 ちょっと普通の人とは違う音と存在感。 
 Mingus53歳の誕生祝いの音源から始まり、途中Mingusの肉声をはさみながら、Mingusの曲に歌詞を付けた演奏を中心にオリジナル曲を数曲、”Goodbye Pork Pie Hat” で締める泣かせる構成。
 発表以来概ね40年、フュージョン系のボーカルアルバムの最高峰は、いまだに”Don Juan's Reckless Daughte”と本作だと思っています。
 他に何かいいのがあったかなあ・・・と考えながら行きつくのはいつもこのシリーズ。
 早く新しい何かに出てきてほしいのだけど・・・
 この一連の作品、さらにPat Metheny、Lyle Mays、Michael Breckerまで迎えたライブ作品”Shadows and Light” (Sep.1979)へと続きます。




 
 posted by H.A.

【Disc Review】“Hearts Wide Open” (2010) Gilad Hekselman

“Hearts Wide Open” (2010) Gilad Hekselman
Gilad Hekselman (Guitar)
Joe Martin (Bass) Marcus Gilmore (Drums) Mark Turner (Saxophone)

Hearts Wide Open
Gilad Hekselman
Le Chant Du Monde Fr
ギラッド ヘクセルマン



 ニューヨーク系コンテンポラリージャズギタリストGilad Hekselmanの第三作。
 現代の若手のエース陣を揃えたクールなコンテンポラリージャズ。
 ビートが複雑になり、いかにも現代的な感じになってきました。
 前二作のオーソドックスな色合いが薄くなり、いかにも最新型なコンテンポラリージャズの怒涛のような演奏。
 ドラムはまさに怒涛のような叩きっぷりですが、ギターは怒涛と呼ぶには違和感のある優しい音。
 押し寄せてくるというよりは、次々と湧きだしてくような・・・、といった表現が妥当なような穏やかな音使い。
 最新作“Homes” (2015)まで続く、激しい系の最新鋭ドラマーMarcus Gilmoreとのコンビネーション、激しさと穏やかさの対比は絶好の組み合わせ。
 数曲で参加するサックスのMark Turnerはギターと同じくクールで不思議系、強い浮遊感の音使い。
 これまたいい組み合わせでしょう。
 本作ではジャズスタンダートはなし、全てオリジナル曲、不思議系。
 いろいろな楽曲が混在していた前作“Words unspoken” (2008)のいろいろな要素が、混ぜ合わさったような統一感。
 さらにドラマチックな編曲、構成が本作から。
 アルバムの先頭と最後に短い“Prologue”、”Epilogue”を配し、後半に向けて徐々に高揚していくするアルバム作り。
 思わせぶりに始まり、紆余曲折を経て、終盤はドカーンと盛り上がる構成。
 アルバム一枚で何かのドラマをイメージした構成なのでしょう。
 最後はフリーに叩きまくる激しいドラムを背景に、ギターが穏やかに淡々と紡ぐバラードで締め。
 アナログ時代育ちの人間としては、アルバム全体のストーリーに想像力を掻き立てられる流れ。
 MP3時代には希少なのかな?
 その他諸々、結果的にはモダンジャズのムードがなくなり、いかにもコンテンポラリージャズ、ニューヨーク系。
 ギターも次から次へと湧きだしてくるような、あるいは、天から降り注いでくるようなイメージはそのままに、あちらこちらに飛んでいく予測不能なフレージングが強くなってきました。
 浮遊感が強くて、不思議で、激しいようで穏やかな複雑な質感。 しかもドラマチックでスリリング。
 さらにクール。
 この質感そのままに、メンバーも同じ次作“This Just In” (Dec.2011,Jan.2012)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Words unspoken” (2008) Gilad Hekselman

“Words unspoken” (2008) Gilad Hekselman
Gilad Hekselman (Guitar)
Joe Martin (Bass) Marcus Gilmore (Drums) Joel Frahm (Tenor Saxophone)

Words Unspoken
Gilad Hekselman
CD Baby
ギラッド ヘクセルマン


 ニューヨーク系コンテンポラリージャズギタリストGilad Hekselmanの第二作。
 デビュー作“Splitlife” (2006)は強い浮遊感、不思議系のトリオでしたが、本作でサックスが数曲で参加。
 冒頭の“Ga'agua”は前作の穏やかさからは想像できない沈痛でヘビーな演奏。
 激情系テナーと激しいギターのソロ。
 現代の若手とは思えないような、Coltrane的な重さのある演奏。
 少なくともテーマのメロディとサックスはそう。
 ギターはあくまでクリーントーン、現代的なサラリとした感じではあるものの、鬼気迫るようなインプロビゼーション。
 これは凄いや、と身構えていると、以降は前作同様の穏やかな表情の不思議系コンテンポラリージャズ。
 サックスが入る曲は若干沈痛だったり、懐かしい感じのエキサイティング系ジャズだったり、歌謡曲風だったりしますが、冒頭曲のようなことはありません。
 この人の本筋はやはり穏やかな表情の不思議系のようです。
 何拍子かわからない複雑なビート。
 フワフワと漂うメロディ。
 “April in Paris”、” Countdown”など、数曲のジャズスタンダードもそんな演奏に化けています。
 普通の4ビートが来るとホッとすること、無きにしも非ずですが、それだと退屈になってしまうのでしょうかね?
 と思っていると“Someone to Watch Over Me”は最後まで静かな普通のジャズバラード演奏だったり、”How Long Has This Been Going On”は素直なラテンだったり・・・
 なんだかわけわからない・・・
 とかなんとか、いろんな要素が入り混じる印象ですが、ギターはすべての曲で超一級のインプロビゼーション。
 ちょっと丸めクリーントーン。 ふわふわと漂いながら突っ走る?、不思議感満載ながらスムースこの上ない音使い。
 天から次々と降ってくるような音。
 とても心地よいうえにクールな質感。
 今から思えば、このアルバムの異質な要素を混ぜ合わせ、融け合わせたのが次作“Hearts Wide Open” (2011)、次々作“This Just In” (2011)と考えられなくもありません。
 にしても冒頭曲は沈痛でヘビーだなあ。
 カッコいいけど。




posted by H.A.

【Disc Review】“Splitlife” (2006) Gilad Hekselman

“Splitlife” (2006) Gilad Hekselman
Gilad Hekselman (Guitar)
Joe Martin (Bass) Ari Hoenig (Drums)

SplitLife by Gilad Hekselman (2006-05-03)
Gilad Hekselman
Smalls Records
ギラッド ヘクセルマン


 イスラエル出身、ニューヨーク系コンテンポラリージャズギタリストGilad Hekselman、デビュー作、ライブ録音。
 とても穏やかで、とても優し気、そしてクールなギタートリオ。
 激しい人も少なくないコンテンポラリージャズギタリストの中、この人は穏やか系。
 イスラエル出身のようですが、他のイスラエル系のジャズの人達と比べると穏やかでオーソドックスなムード。
 ギターの音色はちょっと丸くて太めのクリーントーンで一貫。
 これは最新作“Homes” (2015)まで変わっていないと思います。
 ちょっと聞きでは普通のジャズギタートリオですが、ちょっと変わっています。
 強い浮遊感が漂う不思議系。
 変拍子ではなく、4ビート中心。
 バンドのメンバー、演奏はニューヨーク系コンテンポラリージャズの中ではオーソドックスな方でしょう。
 半数を占めるジャズスタンダードの演奏もオーソドックス。
 でもその普通な感じの演奏が、なぜかちょっと違う感じ、ただ者ではないカッコよさ。
 もちろんその源泉はリーダーのギター。
 ちょっと聞きではオールドスタイルなようで、フレージングはものすごく斬新。
 決して派手でも攻撃的でもありませんが、次から次へと自然に湧き出してくるというか、天から降りてくるようなというか、そんなスムースな音の流れ。
 でありながら、ふわふわとした質感、素直な感じではない不思議な音使い。
 聞き飽きたはずのジャズスタンダードが新しいもののように聞こえます。
 オリジナル曲は不思議系の淡いメロディ。
 後のドラマチックな雰囲気はまだ出ていませんが、穏やかさがかえって魅力的。
 この後メンバーを変更しながら、さらに現代的なコンテンポラリージャズへと変わっていきます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Faithful” (2010) Marcin Wasilewski Trio

“Faithful” (2010) Marcin Wasilewski Trio
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Faithful
Marc Trio Wasilewski
Ecm Records
マルチン・ボシレフスキ


 ポーランドのピアニストMarcin Wasilewski、“January” (2008)に続くECM第三弾。
 前作は硬軟のバランス、妖しさと穏やかさのバランスが取れた名作でしたが、同様の質感。
 本作も漂うような短いバラードからスタート。
 クラシック曲のカバーのようですが、その表情は前作よりも穏やかです。
 二曲目はアップテンポ。
 “Habanera” (2000)あたりのイメージ近いコンテンポラリー系のジャズ曲。
 アップテンポで強い疾走感ですが、あくまでECMのMarcin Wasilewskiの淡い色合い。
 ピアノもドラムも熱は上がりますが、全くうるさくなく、ビート感もヒタヒタと迫ってくる系のグルーヴ。
 似たようなビート感でも1970年代系だと、例えば“Batik” (1978) Ralph Townerのように鬼気迫る緊張感がありましたが、この期では淡々とした質感。
 クールです。
 さらにタイトル曲のOrnette Colemenナンバーはルバートでのバラード。
 この曲含めて他数曲の漂うようなバラードが印象に残ります。
 これらも激烈沈痛ではなくて、Marcin Wasilewskiの淡いテイストのクールな演奏。
 その他いつもの淡い色合いのオリジナル曲、Paul Bley、Hermeto Pascoalのカバーなど。
 ピアノはいつも通りの漂うような柔らかなECMのMarcin Wasilewski。
 微妙なタメと疾走感がいい感じのバランス、スムース、流麗な音の流れ。
 暗くなったり深刻になったりはしません。
 全体を通しては“January” (2008)よりもさらに沈痛感が薄らぎ、より淡い色合いの演奏、加えて軽快で疾走感のある演奏も増えたイメージでしょうか。
 フリーな部分もほとんどなくなり、より聞きやすくもなっているのでしょう。
 クールで現代的。
 同じクールな質感でも、ニューヨーク系コンテンポラリーではメカニカルなのが流行りのようですが、こちらは落ち着いた現代性。
 ここまで柔らかでわかりやすいと、強い緊張感、激烈、鎮痛、耽美、幽玄、革新・・・が特徴のECMっぽくないのかな?
 近年のECMはこれでいいのか・・・
 いまだにこちらの意識の方が切り替わっていないなあ・・・
 やはり現代的。
 次はサックス入りの“Spark of Life” (2014)へと続きます。




posted by H.A.

【Disc Review】“Trio” (2004) Simple Acoustic Trio

“Trio” (2004) Simple Acoustic Trio (Marcin Wasilewski)
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

Trio
Marcin Wasilewski
Ecm Records
マルチン・ボシレフスキ


 ポーランドのピアニストMarcin Wasilewskiのトリオ、Simple Acoustic TrioのECM初録音。
 ECMではポーランドの親分Tomasz Stankoの”Soul of Things” (2002)に参加し、その第二作”Suspended Night” (2003)が近作。
 それらとは近いのですが、華やかな“Habanera” (2000)とは少々印象が異なる、淡い色合いのピアノ、トリオ。
 “Habanera” (2000)ではガンガン来る場面もありましたが、本作は終始フワフワと漂うような、かつ流麗な音の流れ。
 2000年あたりからのECMのピアノトリオはこの種の淡い色合いの作品が増えて着るように思いますが、これもECMマジックなのかもしれません。
 そうだとすれば音の傾向が1970年代とは全く逆なのが興味深いところ。
 これまたECMらしくフリーインプロビゼーション的な演奏が三分の一を占めますが、それら含めて穏やかで優し気な音。
 親分Tomasz StankoやBjörkの楽曲、フリーインプロビゼーションでは少々妖し気なムードも醸し出していますが、それでも演奏自体は深刻でも暗くもありません。
 その他のオリジナル曲も全てほのかに明るくい色合い、軽快な演奏。
 とても柔らかなタッチ、さりげないタメと時折の疾走感、全体を通じてスムースでクールな色合い・・・、あたりがこの人の特徴のように思います。
 地元のレーベルでは硬派なイメージもあったのですが、ECMのこの頃の作品はそうでもありません。
 クラシック的に遠いところから聞こえてくるような印象の録音の影響も大きいように思います。
 硬質、かつ感情移入の激しいKeith JarrettやSteve Kuhnなど一世代前の人達とは全く違う淡くてクールな色合い。
 いかにも現代の若手の音。
 本作は穏やかなフリーインプロビゼーション曲が多めで、その分、少々地味。
 逆に間々の美曲が映え、ベタつかず、落ち着いて聞けるアルバムだと思います。
 次作、素晴らしい楽曲・演奏が揃った名作“January” (2008)へと続きます。




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