吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年08月

【Disc Review】“Como respirar” (2008,09) Georgina Hassan

“Como respirar” (2008,09) Georgina Hassan  
Georgina Hassan (voice, cuatro venezolano, guitar)
Diego Penelas (piano, guitar, voice) Fernando Mántaras (contra bass) Rodrigo Quirós (drums, percussion) Lito Vitale (accordeon) Raly Barrionuevo (voice) Facundo Guevara (percussion) and others

Como Respirar
Georgina Hassan
ヘオルヒナ ハッサン


 アルゼンチン、現代フォルクローレのボーカリスト。
 瑞々しいアコースティックサウンドに透明度高い系のvoice。
 定番の現代フォルクローレサウンド。
 とても優雅なビート。
 バックビートは効いていませんが、その分穏やかで優しげな音。
 水の音、虫の声を背景に緩やかにアコースティックギターを爪弾く系。
 ピアノとギターを中心にしたオーソドックスなサウンド。
 さらに穏やかなピアノとアコーディオン、ベネズエラのウクレレ?クアトロの素朴な音、スチールパン的な音・・・
 などなど、趣のある穏やかな音の連続。
 ジャズ度、ボッサ度はありません。
 オーガニック系のポップスに一番近いのかもしれません。
 決して多くない音数ながら、繊細に作り込まれた音作り。
 個々の楽器の絡みを聞いているだけでも結構楽しかったりします。
 タイトルは「呼吸」の意?
 確かにそんな感じのさりげない日常の音。
 なお、お国もジャンルは違うのでしょうが、また発表も前後しますが、ブラジルのGisele De Santi“Casa” (2016)あたりと雰囲気が似ています。
 そちらは近年では出色のとても美しい作品ですが、同じぐらい美しい作品。
 美しい声と上品な演奏です。
 



posted by H.A.

【Disc Review】“Casa” (2016) Gisele De Santi

“Casa” (2016) Gisele De Santi
Gisele De Santi (voice)
Luiz Mauro Filho (piano) Vangner Cunha (strings)

カーザ
ジゼリ・ヂ・サンチ
プロダクション・デシネ
2016-08-10


 ブラジルのボーカリストGisele De Santi、ピアノとのDuoを中心としたアルバム。
 現代サンバの人、またポップス寄りの人だと思っていましたが、今回はブラジリアンビート抜きのしっとりとしたバラード集。
 ピアノのみを背景にして、時折バイオリンorビオラ?が音を加える形。
 ピアノは音数を絞り込んでいて、残響音のみが響く時間が多い音作り。
 透明度の高いこの上もなく美しい声がそんな空間に響きます。
 コンボでの“Vermelhos e Demais Matizes” (2013)も驚きの美しい声でしたが、その美しさがさらに際立つ作品。
 高い音が微妙に自然に裏返る、なんとも言えない雰囲気を持った歌。
 この質感に浮遊感といった言葉が適当かどうかはどうかわかりませんが、しっとりとしていながらも、要所々で軽く浮き上がる、そんな感じです。
 ピアノはあくまで薄目の背景を作るのみ。
 インプロビゼーションも控えめ。
 ストリングスも思い出したように上品なアクセントを入れるのみ。
 オーディオ的にも楽器の配置は奥。
 少し遠くから聞こえてくるような、余剰なものを徹底的にそぎ落とした音。
 その前面に出て、その上をフワフワと舞うような美しいvoice。
 楽曲はオリジナルが半数、Djavan, Chico Buarque, Caetano Veloso, Beatles。
 MPBを中心としたポップス曲が中心ですが、クラシック、あるいはフォルクローレのような優雅な響き。
 淡い色合いの切ないメロディ揃い。
 それでもこの声、歌い方でなければこの淡くて切ない色合いは出ないでしょう。
 とても美しく穏やか、とても上品。
 タイトル、ジャケットのイメージ通り、室内楽的でインティメートな音。
 ちょっとした緊張感はあるのかな?
 ここまで美しくて穏やかで上品な作品は他にあったかなあ?
 2016年のイチオシはこれかな? 




posted by H.A.

【Disc Review】“Vermelhos e Demais Matizes” (2013) Gisele De Santi

“Vermelhos e Demais Matizes” (2013) Gisele De Santi
Gisele De Santi (voice)
Gilberto Ribeiro Jr. (Keyboards, Guitar, Drums, Bass, Percussion, etc.) Gionanni Basbieri, Luciano Leaes (Keyboards) Fabricio Gambogi (Guitars) Wagner Lagemann, Ana Paula Freire (Bass) Cassiano Barreto Miranda, Marcos Suzano, Gustavo Rosa, Bruno Coelho, Tuti Sagui, Tuti Sagui (Percussion) Jorginho Do Trompete (Flugel horn) Ianes Gil Coelo (Flute) Vitor Ramil (Voice) and Others

ヴェルメーリョス・イ・ヂマイス・マティゼス
ジゼリ・ヂ・サンチ
プロダクション・デシネ
2013-11-13


 現代サンバにカテゴライズされるのでしょうか?ブラジルのGisele De Santi、セカンドアルバム。
 これはすごいボーカリスト。
 とてつもなく美しいvoice。
 少々ハスキーなシルキーボイスと書くと矛盾しているような気もしますが、そんな微妙な声。
 透明度高い系、かわいらしい系ですが、ここまで美しい声、なんとも説明し難い微妙な声は久々に聴いたような気がします。
 高い音がわずかに裏返り気味で、それでも全くぶれない安定感。
 力が入りそうなところでなぜかスルッと抜けていくようなイメージ。
 それらがなんとも微妙なニュアンス、優雅さ、優しさを醸し出しいるように思います。
 同じくブラジルのRoberta Sáに近い感じ。
 Roberta Sáもとてつもなく美しい声ですが、さらに濾過したような感じ?
 凄まじい美しさ、ってのも妙な表現ですが、素晴らしいvoice。
 全編に哀愁が漂うオリジナル曲中心。
 Roberta SáAna CostaMaria Ritaあたりのトラディショナルなサンバ系MPBとは違った色合い。
 終始緩やかなビート感、サンバ特有の高揚感を作るアレンジもありません。
 もっと穏やかで洗練された色合い。
 全体的にはポップステイストでしょう。
 歌謡曲っぽい、とまで思えるようなキャッチーさ。
 それでもアコースティックな質感、過剰に作り込まれているわけでもないので、あくまでナチュラル。
 考え抜かれた思われるアレンジ、あくまで静かで薄目の音がボーカルのカッコよさを際立たせているようにも思います。
 少々ポップス寄りの曲は少し好みとはズレるけども、この声の凄みには勝てません。
 ・・・にしても、ブラジルにはどれだけすごいボーカリストがいるんでしょうね?
 恐るべし。 




posted by H.A.

【Disc Review】“4321” (2006) Giana Viscardi

“4321” (2006) Giana Viscardi
Giana Viscardi (voice)
Michael Ruzitschka (guitar) Fabio Torres, Christian Gall, Guilherme Ribeiro (Keyboards) Marcio Arantes, Paulo Paulelli (bass) Sergio Machado (drums) Armando Marcal, Mathias Kunzil, Bruno Buarque (percussion) and others

4321
ジアナ・ヴィスカルヂ
Rambling Records
2006-07-05


 ブラジルのボーカリストGiana ViscardiのMPB作品。
 MPB、いろんなアーティスト、諸々の色合いの音がありますが、本作はジャズ・ファンク・ポップ系とでも呼んでおきましょうか。
 躍動感が前面に出たアコースティック・ブラジリアンポップス。
 “Live at Mojo Club” (1995) Joyce、“Agora” (2010) Dani Gurgelに近いムード。
 それらよりも少しアメリカンロック~ポップス寄りでしょうか。
 この手のMPBの女性ボーカルもの、旦那が楽器を弾いて、作曲、編曲、プロデュースまで手掛け、その人の色合いが強い音になる場合が多いようです。
 古くはAstrad Gilberto, Elis Regina, Joyce・・・、近年ではMaria Rita, Roberta Sa・・・などなどなど。
 そうでない方が少ないのでは?
 本作も夫君らしいMichael Ruzitschkaがギターと音楽監督。
 ちょっとロック混じりのヤクザな感じのカッコいいアコースティックギターが先導するバンドサウンド。
 ギタートリオ+ピアノを中心に、ボッサ、サンバ風味が隠し味のしなやかなビート、さりげないグルーヴ。
 アコーディオン、ストリングスなどが彩を添えるオーソドックスなスタイル。
 メロディは現代的アメリカンポップス風味かな、と思っていたら、旦那はオーストリア出身?、奥様とはバークリー仲間?のようですね。
 後で気付いて妙に納得。そんな感じの音です。
 そのオリジナル曲がカッコいい曲揃い。
 シンプルなようで小洒落ていて、オーソドックスなようでちょっとしたひねり。
 明るいポップス系はあまり好みではないのだけども、この楽曲群はいけます。
 ブラジル的ビートが背後に流れていることもあるのでしょう。
 主役のボーカルはブラジルの定番、気持ちスモーキーな優しい系。
 抜群のボイスコントロール、安定感。
 ちょっと押しが強い方かもしれません。
 ってな感じでオーソドックスなようで、ちょっとないカッコよさ。
 オシャレです。 




posted by H.A.

【Disc Review】“Buena Vista Social Club” (1996) Buena Vista Social Club, Ry Cooder

“Buena Vista Social Club” (1996) Buena Vista Social Club, Ry Cooder
Luis Barzaga (chorus vocals) Joachim Cooder (drums, percussion) Ry Cooder (guitars) Julio Alberto Fernández (vocals, maracas) Ibrahim Ferrer (vocals) Carlos González (bongos, cowbell) Juan de Marcos González (tres, guiro, chorus vocals) Rubén González (piano) Manuel ‘Puntillita’ Licea (vocals) Orlando ‘Cachaíto’ López (bass) Manuel ‘Guajiro’ Mirabal (trumpet) Eliades Ochoa (guitar, vocals) Omara Portuondo (vocals) Salvador Repilado (bass) Compay Segundo (guitar, vocals) Benito Suárez Magana (guitar) Barbarito Torres (laoud) Alberto ‘Virgilio’ Valdés (maracas, coro) Lazaro Vila (congas)

Buena Vista Social Club
Ry Cooder
Nonesuch
ブエナビスタ ソシアルクラブ


 大ヒットしたキューバンミュージック。
 とても優雅な世界。
 1940年代あたりで時間が止まったような世界。
 ジャケット写真のクラシックカーのような優雅さ。
 もちろん年月は経ていてもバリバリの現役。
 世界は時代と共に変化したかもしれないけども、このアルバムの音は昔のまま。
 しかも長い時間の経過がつけた皺が加わった深い音。
 いいことばかりでは無かったことを包み隠すようなグルーヴィーなビート、時折の熱狂。
 にじみ出る哀感。
 仕掛け人はRy Cooder。
 “Chicken Skin Music” (1976)、“Jazz” (1978)の延長線上ではないけども、古き良き世界を、現代の音で表現したという意味では同じ。
 が、先の二作はその古き良き時代を再現、あるいはそのエッセンスで作ったものかもしれないけども、こちらは21世紀直前、現代の「ホンモノ」。
 神々しいまでの存在感。
 Gonzalo RubalcabaやIrakere、Arturo Sandovalなどアメリカに渡ったCubaの人の音と比べると、ビート感は共通するものの、全く違う印象の音。
 洗練されているとともにアグレッシブな印象の渡米勢に対して、こちらは長閑なようで、平和なようで、楽しげなようで、全体を漂う哀感。
 演奏している人は無意識、打算無しにやってるのでしょうが、そこはかとなく漂う凄み。
 それが数十年の年輪であり、彼らが経てきた生活そのもの、外界に侵されていない純粋さ、なのかも。
 その中にさりげなく溶け込んでしまうRy Cooderも凄い人だなあ。
 Louis ArmstrongやBix Beiderbeckeが別世界で生きていて、今の時代に突然現れたらこんな感じのジャズなのでしょうかね。
 本作はもちろん、“Ibrahim Ferrer” (1999)、“Chanchullo” (1997-2000) Rubén González、その他含めて関連作品すべてがそんな音です。




posted by H.A.

【Disc Review】“Jazz” (1978) Ry Cooder

“Jazz” (1978) Ry Cooder
Ry Cooder (guitar, dobro, vocals, mandolin, tiple, harp)
John Rodby, Earl Hines (piano) Barbara Starkey (pump organ) David Lindley (mandobanjo, mandolin) Tom Pedrini, Chuck Domanico, Chuck Berghofer (bass) Mark Stevens (drums) Harvey Pittel (alto sax, clarinet) Tom Collier (marimba, vibraphone) George Bohanon (baritone horn) Oscar Brashear (cornet) Stuart Brotman (cimbalom) Red Callender (tuba) David Sherr (bass clarinet) Randy Aldcroft (trombone) Pat Rizzo (alto sax) Mario Guarneri (cornet) Bill Hood (bass sax) Willie Schwartz (clarinet) Jimmy Adams, Cliff Givens, Bill Johnson, Simon Pico Payne (backing vocals)

Jazz
Ry Cooder
Imports
ライ・クーダー


 Ry Cooderのこれまたパラダイスミュージック。
 本作のテーマはジャズ。
 ジャズと言ってもモダンジャズではなく、オールドスタイル。
 1920年代?のコルネット奏者“Bix Beiderbecke”をメインテーマとした構成のようです。
 そんなノスタルジックな音。
 さらにオールドジャズだけでなく、テックス・メックスやら、ハワイやら、その他諸々の色合いも混ぜ合わせたような質感。
 本人は失敗作と思っているように聞いたことがあるけども、何でだろう?
 中途半端にノスタルジックに作りすぎたこと?
 きれいにまとめ過ぎたこと?
 もしそうだとしても、私からすれば大傑作、完璧な作品に聞こえます。
 たくさんのメンバーが参加していますが、分厚い音ではありません。
 むしろ薄めで涼しげ、あくまでスッキリとしたのどかな音。
 リズムもハイテンションな2ビート、4ビートではなくて、あくまでゆったり。
 とても優雅。
 ゆるゆるなようで、ちょっと洗練された感じ、締まった感じでしょうかね。
 中心楽器はアコースティックギター。
 ホーンのアンサンブル、ドブロ、ピアノ、ビブラフォンなどが彩を添える構成。
 ボーカル入りは数曲のみ。
 一曲一曲がコンパクトなので、次から次へと景色が変わって退屈なし。
 セピア色の心地よい時間。
 好みからすると、スラックキーギターがフィーチャーされてハワイ的なパラダイス感も強い“Chicken Skin Music” (1976)がいいような気もするし、インスト中心のこちらの方がいいような気もするし・・・
 ま、気分次第で・・・
 どちらも最高のパラダイスミュージック、だと思います。
 晩夏に似合うなあ。
 まだとても暑いけど・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Chicken Skin Music” (1976) Ry Cooder

“Chicken Skin Music” (1976) Ry Cooder
Ry Cooder (Bajo Sexto, mandola, bottleneck guitar, French accordion, electric guitar, slack-key guitar, tiple, Hawaiian guitar, vocals)
Red Callender (upright bass, tuba) Chris Ethridge, Henry Ojeda (bass) Atta Isaacs (slack-key, acoustic guitar) Gabby Pahinui (steel guitar, vocals) Hugo Gonzales (banjo) Russ Titelman (banjo, bass, vocals) Milt Holland (percussion, drums) Jim Keltner (drums) Flaco Jiménez (accordion) Oscar Brashear (cornet) Pat Rizzo (alto sax) Fred Jackson, Jr. (tenor sax) Benny Powell (trombone) Terry Evans, Cliff Givens, Laurence Fishburne, Herman E. Johnson, Bobby King (vocals)

Chicken Skin Music
Ry Cooder
Reprise / Wea
ライ・クーダー


 夏の終わりに似合いそうなこのアルバム。
 アメリカンロックのRy Cooder、テックス・メックス(テキサス系メキシコ系音楽?)とハワイ系音楽をフュージョンした作品・・・なのだと思います。
 私の想うパラダイスミュージックの代表選手。
 普段はジャズが南米系しか聞かないのですが、これ、あるいは“Jazz” (1978) Ry Cooderは、何年かに一度、思い出しては取り出して極楽気分に浸る・・・そんなアルバム。
 スラックキーギターにスライドギターにアコーディオン。
 メキシコなのか、アメリカ南部なのか、ハワイなのか、それらが交錯する不思議な質感。
 楽曲の出自には詳しくありませんが、どの曲もどの演奏もフワフワしていて心地よいこと、この上なし。
 ゆるゆるな音。
 聞いていると気持ちが弛緩して軽ーくなる、そんな感じ。
 脈略がなさそうな組み合わせが、なぜか最初から最後まで一貫した質感の音。
 あのソウルの名曲”Stand By Me”までがゆるくて、アコーディオンの響きが切なくて・・・
 ハワイ、あるいはアメリカ南部~メキシコあたりの人気が少ない田舎町ののほほんとした景色、ゆったりとした空気。
 全編、柔らかくて温い風が吹いてくるような音。
 とても穏やかで幸せ。
 ロック全盛期にこれをシレっとやってしまうRy Cooderのセンスに脱帽。

 この前後のRy Cooder作品はカッコいい作品ばかり。
 どれもアメリカ南部中心に、あちこちのエッセンスを加えてルーズなムード、ノスタルジックなムードがいい感じ。
 “Paradise And Lunch” (1974)、“Chicken Skin Music” (1976)、 “Jazz” (1978)、“Bop Till You Drop” (1979)・・・
 最後のアルバムが大ヒットして、その後はあまり聞かなくなったような記憶があります。
 ちょっと普通のポップス、ロック側に強く振れてきたからかな? なぜだかよく覚えていません。
 次にRyさんに再会するのは、おおよそ20年後、あの”Buena Vista Social Club”。
 とりあえず思い出したので全部聞いてみることにしましょう。
 どれもパラダイスだったような・・・




posted by H.A.

【Disc Review】"No Reason to Cry" (1975, 1976) Eric Clapton

"No Reason to Cry" (1975, 1976) Eric Clapton
Eric Clapton (guitars, vocals)
Bob Dylan, Ron Wood, Rick Danko, Richard Manuel, Robbie Robertson, Georgie Fame, Ed Anderson, Aggie, Brains Bradley, Jesse Ed Davis, Terry Danko, Bob Ellis, Connie, Konrad Kramer, Yvonne Elliman, Geoffrey Harrison, Levon Helm, Garth Hudson, Marcy Levy, Nello, Jamie Oldaker, Albhy Galuten, Dick Simms, Nat Jeffery, Ralph Moss, Dick La Palm, Dread Lever, Billy Preston, Chris Jagger, Carl Radle, Sergio Pastora Rodriguez, Wilton Spears, Dominic Lumetta, Sandy Castle, George Terry, Rob Fraboni, Larry Samuals, Mick Turner, Wah Wah Watson, Pete & All at Shangri-La

ノー・リーズン・トゥ・クライ
エリック・クラプトン
USMジャパン
2011-11-09


 Eric Clapton、もともとThe BandにあこがれてDerek and the Dominos?を結成した?と聞いたような気もするけども、その人脈を一堂に集めた超豪華アルバム。
 ブルース、カントリー、ソウル、その他諸々が混ざり合う、これがアメリカンロック、サザンロックの典型だなあ・・・と思います。
 もちろんBritishな色も入っているのかもしれませんが、これだけのメンバーが集まってしまうと、どう演奏してもアメリカン。

 冒頭、"Beautiful Thing"、The Bandっぽいなあと思うとRick Dankoの曲。
 The Bandのベストチューンというとその筋から怒られるのでしょうが、のっけから極め付けにソウルフルなスローバラード。
 続く"461 Ocean Boulevard" (1974)っぽい"Carnival"はもちろんEric Claptonの曲。
 そして本物の極め付け、Bob Dylan "Sign Language"。
 これは説明するだけ野暮。
 いやはやなんとも言葉もありません・・・
 Ron Woodのヒット曲”Seven Days”も確かこのセッション向けの曲のはず。
 もしこのメンバーでやっていたら・・・
 続く"County Jail Blues"はいつになくゴージャズなブルース。
 さらに”Wondeful Tonight”の原型のような"All Our Past Times"。
 当然Eric Claptonの曲だと思っていたけど、Rick Dankoのクレジットもあるなあ・・・

 アナログB面に移って、可愛らしいヒット曲"Hello Old Friend"経て、久々のヘビーなブルース、泣きのギター炸裂の"Double Trouble"。
 そしてこれまた極め付けのソウルバラード"Innocent Times"、歌うはMarcy Levy。
 シンプルながら、凄いインパクト。
 最初に聞いた時はこの曲が一番頭に残っていたなあ。
 さらにいかにもRon Wood的(違ってたりして・・)スライドギターが唸るロックナンバー"Hungry"に続いて、これまた極め付けのAOR的バラード"Black Summer Rain"。
 これは泣けます。
 "There's One in Every Crowd" (1974,1975)の"Opposites"のようなアレンジの流れ。
 最後にドカーンと来るかと身構え(期待し)ていると、まずまず穏やかに終わって一安心。
 Eric ClaptonとRobbie Robertson(ですよね・・・)のギターの穏やかな絡みがカッコいい、素晴らしいエンディングです。
 CDには一曲スローブルースが追加。
 邪魔になるのかな?と思っていましたが、これもアンコールっぽくていい感じ。

 ということで、いくつもの極め付けが揃ったとてつもないアルバム。
 私的Eric Clapton の一押しは"There's One in Every Crowd" (1974,1975)ですが、私的アメリカンロックベストアルバムはこれです。
 これまた少数派であることに異論はありませんが・・・




posted by H.A.

【Disc Review】"There's One in Every Crowd" (1974,1975) Eric Clapton

"There's One in Every Crowd" (1974,1975) Eric Clapton
Eric Clapton (vocals, guitars)
George Terry (guitars, vocals) Jamie Oldaker (drums, percussion) Dick Sims (organ, piano, electric piano) Carl Radle (bass, guitar) Yvonne Elliman (vocals) Marcy Levy (vocals)

安息の地を求めて
エリック・クラプトン
USMジャパン



 Eric Claptonで一番好きなアルバムを挙げるならこれ。
 少数派なのかもしれません。
 たぶん一番レイドバックしているように感じるから。
 ロックロックした曲が入っていないこと、渋いボーカルスタイルが確立した?こともあるのでしょうかね。
 冒頭の"We've Been Told"からゆるゆるな感じ炸裂。
 ドブロギターのルーズな響きと、コーラスのワイワイした中から出てくる力が抜けたボーカルのカッコいいこと。
 続く可愛げなレゲエ"Swing Low, Sweet Chariot"、ちょっとロックな"Little Rachel"も、あくまで沈んだ感じの渋いボーカル。
 またまたレゲエな"Don't Blame Me"ときて、スローブルース"The Sky Is Crying"。
 これまた声を大きくは出さないボーカルがなんとも渋いし、ワウとディストーション掛けたシンプルこの上ないスライドギターがカッコいい。
 "Singin' the Blues"はソウル~ソウルナンバー。
 Eric Claptonの渋いボーカルと華やかでソウルフルなコーラスの絡みは、この頃のこのバンドの典型的な音作り。
 続く"Better Make It Through Today"。
 これが一番好きなEric Claptonのポップス曲。
 “Wondeful Tonight”や”Tears in Heaven”が人気なのはわかるけど、渋いのはこちら。
 渋すぎるといえばその通りなのだけども、さりげないブレイク、コートチェンジにゾクッときます。
 さらにはやっと出ました泣きのギター。
 短いけど。短いからカッコいいのか・・・
 さらには、カリプソかと思っていたらいきなり10ccみたい?なコーラスが入る"Pretty Blue Eyes"もご愛嬌。
 締めに向かって"461 Ocean Boulevard" (1974) "Mainline Florida"にも似た前向きなロックナンバー"High"。
 インタールードのアーシーなオルガン、ちょっと長めのギターのソロ。
 不自然なフェイドアウトで、これで終わりかな?と思っていると、さりげなくアルペジオで始まる締めのバラード"Opposites"。
 これがとてつもなくカッコいい演奏。
 シンプルこの上ないメロディ、深い歌詞~思わせぶりな間奏~一瞬のLaylaのリフの断片~二コーラスが終わってからのエンディングが鳥肌モノ。
 徐々に音量を上げるオルガンとシンプルな8ビート。
 ドブロギターのシンプルなフレーズのこれでもかこれでもかのリフレイン。
 その周囲を取り巻くような、さまざまな楽器の絡み合い・・・
 ゴスペルチックな昂揚感、陶酔感。
 ゆるーいようでとても繊細でドラマチック。
 大名作。




posted by H.A.

【Disc Review】"461 Ocean Boulevard" (1974) Eric Clapton

"461 Ocean Boulevard" (1974) Eric Clapton
Eric Clapton (vocals, guitars)
Yvonne Elliman (vocals) Dick Sims (keyboards) George Terry (guitar, vocals) Carl Radle (bass) Jamie Oldaker (drums, percussion) Al Jackson, Jr. (drums) Albhy Galuten (synthesizer, piano, clavichord) Tom Bernfield (vocals) Marcy Levy (harmonica, vocals)

461オーシャン・ブールヴァード
エリック・クラプトン
USMジャパン
2011-11-09


 晩夏に似合う音シリーズ。
 思いついたのが突然ですが、Eric Clapton。
 好みのアルバムを三枚挙げると、"461 Ocean Boulevard" (1974)、"There's One in Every Crowd" (1974,1975)、"No Reason to Cry" (1975, 1976)。
 不思議なもので同時期、連続する三作品。
 たぶんアナログレコード時代の作品は全部聞いていると思うのだけど、CDに買い直したのはその三作品と"Layla and Other Assorted Love Songs"(1970)のみ。
 マニアではない普通のアメリカンロック好きだったらそんなものなのかな?
 Derek and the Dominosのライブアルバムとかも久々に聞きたいなあ、と思って、ン十年・・・


 "Motherless Children"のスライドギターが鳴ると今でもワクワクします。
 典型的な1970年代アメリカンロック。
 ギターソロ、やらないんだ・・・と思ったのは昔のこと。
 このくらいが一番いい頃合い。
 続く"Give Me Strength"のレイドバック(懐かしい!)した音。
 涙腺をくすぐるオルガンとドブロの響き。
 ぬるめの風が緩く吹いてくるような心地よさ。
 さらに、ボ・ディドリービートがそうは聞こえないスッキリとした"Willie and the Hand Jive"から、ソウルっぽい"Get Ready"のファンキーさ。
 Rolling Stonesがこれに似たことやってたのは何だったっけ?・・・
 ”Hot Stuff”?何か他の混ざってるなあ・・・”Fingerprint File”?・・・
 最後に一瞬だけの歪んだギターと笑い声、間髪入れずに始まるのがあの"I Shot the Sheriff"。
 ギターのカッティング、オルガン、ピアノの完璧な絡み合い。
 さりげないギター、ピアノのオブリガードのカッコいいこと。
 なんともカッコいいアナログA面。

 B面はdullなブギーのブルース、短いスライドギターソロがカッコいい"I Can't Hold Out"からスタート。
 続くバラード二曲。
 ドブロギターとコーラスが切なく響く"Please Be with Me"。
 ビートルズチック?でドラマチックな"Let It Grow"。
 ”Let It Be”には似てないよね・・・
 ん?・・・
 さておき、間奏のドブロの響きとアウトロのアルペジオの泣けること泣けること。
 これも普通にギターソロとか入れないのがカッコいいんだろうなあ。
 さらには思わず体が揺れるファンキーなアレンジの実はどブルース"Steady Rollin' Man"。
 ここでやっとそれらしいギターソロが出てきますねえ。エフェクターたっぷりですが。
 締めはシンプルなリフ、前向きにドカーンと盛り上がるアメリカンロックな"Mainline Florida"。
 大声出さないボーカルとソウルソウルしたコーラスの絡みのカッコいいこと。
 Yvonne Elliman、Marcy Levyのサザンロック最強女性コンビ。
 いやはやなんとも・・・

 何年振りかに聞きましたが、こりゃ最高ですね。
 泥臭そうなことをやっても、ほんの少しだけ洗練されてしまうのが、この頃のEric Claptonサウンドのカッコよさ、なのかな?




posted by H.A.
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