吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2016年06月

【Disc Review】"Holon" (2007) Nik Bärtsch's Ronin

"Holon" (2007) Nik Bärtsch's Ronin
Nik Bärtsch(Piano)
Sha (Bass Clarinets, Alto Saxophone) Björn meyer (Bass) Kaspar Rast (Drums) Andi Pupato(Percussion)

Holon
Nik Bärtsch's Ronin
ECM
ニック・ベルチェ


 アルファベット以外の文字打ち出すのってホント大変です。
 時間掛かりました。
 スイス人ピアニスト、ニック・ベルチェ。
 読み方、合ってますかね?
 初めてライブを見に行った時は、普段CDで聞いている音の綺麗な箇所と、ライブならではの音の美しさが、手法は違えども、凄く近い!
 いったい何?
 PAさんとの意思疎通でこんなにも音楽を表現できる物なのかと、まるで手品を見ているかのように驚いた事を覚えています。
 このCDの中で一番惹き付けられたのは、2曲目”Modul 41_17”。
 テクノのアーティストUnderworldの”Beaucoup Fish”の冒頭曲”cups”を想わせる展開。
 一定の流れの後にくる、テンポが変わったとさえ感じる、力強いシンプルなシンセコード。
 ミニマルな進行から突然色々な要素を重ねる、リスナーをいい意味で裏切る構造。
 それに近いモノが“Modul 41_17”にはあります。
 少量ずつ音を足して行き、時間軸上此処だ!と言う所で一気に全体表現に移る瞬間・・・
 ぐっと来ます。
 曲の起承転結を考えた時、前後関係が大事だなといつも思います。
 この曲はその大事な部分を見事に形にしています。
 心地よく、力強い音楽を聴きたい方にお薦めな1曲です。




posted by N.A.

【Disc Review】"Shadow Theater" (2013) Tigran Hamasyan

"Shadow Theater" (2013) Tigran Hamasyan
Tigran Hamasyan (Piano, Harpsichord, Celesta, Synth, Glockenspiel, Voice)
Christopher Tordini, Sam Minaie (Bass) Nate Wood (Drums, Percussion, Voice) Ben Wendel (Bassoon) Ben Wendel (Saxophone) Jean-Marc Phillips-Varjabédian (Violin) Areni Agbabian, Christopher Tordini (Voice)

Shadow Theater
Tigran
Imports
ティグラン・ハマシヤン


 「作風変えて来たなあ」が第一印象。
 音作りがjazzじゃなく、ヒップホップやエレクトロニカから影響を受けている感じがします。
 prefuse73とか好きなんじゃないのかな?
 演奏にエフェクトを掛けようが何しようが、根元は間違いなくティグランそのもの。
 電子音楽好きに薦めたい一枚です。
 後半9、10曲目の”Pt2 Alternative Universe”。
 独特のリズム感に持続する和声とブリッブリベースが謎のマッチング。
 出だしjazzで最後混沌。
 jazz好きな方にはキツいかな?と思いますが。
 このアルバムで一番好きなのは最後の“Road Song”。
 盛り上がり方がスマートで陶酔感があり、吸い込まれる感じがします。
 独特な疾走感が楽しめる作品です。





posted by N.A.

【Disc Review】"Cribas" (2006) Mono Fontana

"Cribas" (2006) Mono Fontana
Mono Fontana (piano, etc.) and others

Cribas
モノ・フォンタナ

2007-05-18


 アルゼンチン音響派のピアニスト。
 穏やかなピアノの周囲をさまざまな効果音が絡む構成。
 時計の音、靴音、ドアの閉まる音、椅子のきしむ音などの生活音。
 話し声、朗読・・・その他もろもろ。
 タイトルは「検査官」って意味のようですので、その情景を描こうとしたのでしょう。 たぶん。
 さりげなくて、ふわふわとしていて、コミカルなようで、哀感が漂うメロディ。
 ジャズの香りも強いピアノ。
 Paul Bleyあたりの雰囲気。
 それをもっと丸くしたような音使い。
 内省的なようでどこか冷めた質感。
 生活感があるようで、世間を拒絶しているようなムード。
 これを厭世感ととらえるか、淡々とした通常の人間個人の営みと感じるか?
 展開は予測不可能。
 グラデーションをつけながら、徐々に、次々と場面が変わっていくような展開。
 それでも穏やかな音。
 ピアノによる演劇、あるいは音による情景描写。
 音楽で○○○を表現、○○○にインスパイアされて・・・というより、あくまで情景描写優先。
 これは新しい行き方でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】“Khali” (2007) Alejandro Franov

“Khali” (2007) Alejandro Franov
Alejandro Franov (Sitar, Arpas, Bass, Keyboards, Kalimba, Vocals, Handclaps, Guitar, Percussion, Indonesian Flute, Glockenspiel, Whistle, Marimba, Accordion, Rainstick)
Emiliano Rodriguez (Udu) Lea Franov (Vocals) Marcos Cabezaz (Marimba) Emiliano Rodriguez (Guitar Synthesizer)

アレハンドロ・フラノフ

 アルゼンチンのアーティスト、マルチ楽器奏者Alejandro Franov。
 アルゼンチン音響派といった括りがあるようですが、この作品あたりが真骨頂なのでしょうか?
 これだと電子音系が足らないのかな?
 シタールを中心とした弦楽器、カリンバの素朴な響きが印象に残る作品。
 穏やかで幻想的な音楽。
 聞きなれない音色、妖しいムードはありますが、ほどほどポップな感じがいいバランス。
 曲ごとに軸となる楽器が変わり、さらにさまざまな楽器の響きが絡み合う空間。
 微妙で繊細な漂うような音。
 緩やかなビート、穏やかでナチュラルなグルーヴ、電子臭はありません。
 今のクリエイティブ系の人らしく、ミニマル的な音使い、シンプルなリフを繰り返す場面も多く、穏やかな陶酔感。
 要所に入る遠くから聞こえるようなvoiceが幻想的なムードを助長します。
 エスニックな音であるとともに、どこか懐かしい感じ、南米的郷愁感もあるような気もします。
 でも、現代的で洗練されたイメージが強いかな?
 いずれにしても、過去、現代、南米、アジア、洗練、自然、その他諸々の要素が交錯する、不思議で絶妙なバランスの音の流れ。
 とても素敵なジャケットそのままの音、でもあります。
 いいオーディオ、天井の高い広い部屋で聞くと気持ちいいんだろうなあ。
 そんな音。
 どこの国にいるのか、また、どの時代にいるのかさえ曖昧になる素敵なトリップミュージック。




posted by H.A.

【Disc Review】“Melodia” (2005) Alejandro Franov

“Melodia” (2005) Alejandro Franov
Alejandro Franov (piano)

Melodia
NATURE BLISS
アレハンドロ・フラノフ


 アルゼンチンのアーティスト、マルチ楽器奏者Alejandro Franov、ピアノソロ作品。
 静かで穏やかな音。
 郷愁感も漂う美しいメロディが揃っていますが、なんだか不思議系。
 一分~四分程度の短い曲を次々と演奏していくスタイル。
 全て即興なのかもしれません。
 次々と緩やかに景色が変わっていくような展開。
 一曲の中でも演奏が進むにつれ少しずつ変化する音楽の流れ。
 一様でなく、微妙なグラデーションがついた音。
 明らかにズレた音や不協和音を使うわけではないのですが、全体を漂う不思議感、微かな違和感。
 波紋が広がるように・・・といったコピーがあったように思いますが、まさにそんな音。
 定常で規則性があるようで、静かに次々と微妙に変化していく流れ。
 強風、微風、温かい風、冷たい風・・・さまざまな風も吹くし、木の葉も舞うし・・・・
 規則性があるようで無い、あるいは、無いようで大きな流れとしてはある、自然な情景を描こうとしたのでしょうかね。
 ・・・ってな想像力を掻き立てる音。
 この断続的な微妙な変化と、そこから何を感じ取るか・・・
 ってなのがこの種の音楽の楽しみ方なのかもしれません。




posted by H.A.

【Disc Review】“Cruces” (2012) Andrés Beeuwsaert

“Cruces” (2012) Andrés Beeuwsaert
Andres Beeuwsaert (piano, keyboards, vocal, guitar)
Juan Pablo di Leone (picollo, flute) Fernando Silva (cello, bass) Santiago Segret(bandoneon) Gabriel Grossi (harmonica) Loli Molina (vocal) Pablo Passini (guitar, voice) Ramiro Nasello (flhugelhorn)

クルーセス~交差する旅と映像の記憶~
Andres Beeuwsaert
アンドレス・ベエウサエルト
2012-12-12


 アルゼンチン、現代フォルクローレのピアニストAndrés Beeuwsaert。
 ドラムレス、ピアノを軸にしてさまざまな楽器が絡む構成。
 フルート、バンドネオンなどいかにも南米フォルクローレ的な穏やかで浮遊感のあるアンサンブル。
 作りとしては “Dos ríos” (2008) に似たムードですが、不思議感が和らぎ、明るさが前面に出て、少しだけポップ、聞きやすくなっているように感じます。
 ピアノを中心としたインプロビゼーションのスペースも広め。 
 クラシックの香りが漂う上品かつ、疾走感、加速感のあるピアノ。
 ブラジルのAndre Mehmariあたりに近いムードですが、少しジャズの色合いが強め、もう少し線が細くて繊細な感じでしょうか。
 穏やかで優し気なオリジナル曲。
 南米特有の郷愁感、ブラジル系よりもおおらかな印象。
 それらに加えて、なぜかEgberto GismontiっぽいあのLyle Maysの曲、さらにはアルゼンチンのDino SalussiCarlos Aguirreの曲など。
 最後の曲などはアコースティックギターのストロークが効いたPat Metheny Groupのムードも漂う演奏。
 彼らがブラジル・ミナス、アルゼンチンフォルクローレの色合いを吸収したのでしょうが、次の世代には逆の流れも起こっているのでしょうね。
 いずれにしてもフォルクローレ、ジャズ、その他、ジャンルの枠組みにははまらない穏やかで上品、優雅な音楽。
 これまた名作です。





posted by H.A.

【Disc Review】“Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaert

“Dos ríos” (2008) Andrés Beeuwsaert
Andrés Beeuwsaert (piano, keyboards, vocal, guitar, glockenspiel, cymbals)
Fernando Silva (cello, bass) Loli Molina (vocal, guitar) Victor Carrión (soprano sax, flute) Juan Pablo di Leone (flute) Ezequiel Dutil (bass) Nico Cota (percussion) Dana Najlis (clarinet) Juan Quintero (guitar) Mariano Cantero (percussion) Lucio Balduini, Matías Zabaljauregui (electric guitar) Matías Mendez (bass) Hernán Segret (acoustic guitar) Facundo Guevara (percussion, escobillas) Martín Lambert (cymbals) Aline Gonçalves (flutes) Tatiana Parra, Silvia Perez Cruz (vocal)

Dos ríos
Limbo
アンドレス・ベエウサエルト


 アルゼンチンのピアニストAndrés Beeuwsaert。
 Aca Seca Trio、”Aqui” (2010) Tatiana Parra & Andras Beeuwsaertが人気、現代フォルクローレがメインの人なのでしょう。
 穏やかで淡い色合いの優しい音楽。
 メロディアスですが少し不思議系、意外な方向へ動く音作り。
 少し沈んだムード、幻想的な雰囲気もありますが、沈痛だったり、抽象的だったりはしません。
 ゆったりとした優雅なビート、透明度の高い美しい音のピアノの周囲をさまざまな楽器が漂うような音作り。
 インプロビゼーションスペースは小さく、あくまでアンサンブル中心の音作り。
 分厚い音ではなく、あくまで少人数で穏やかな音。
 主役のピアノを含めて、さまざまな楽器が入れ代わり立ち代わり穏やかな背景を作り、また、同じくさまざまな楽器が前面に出て優しいメロディを紡いでいく構成。
 要所で入る遠いところから聞こえるようなvoiceがとても幻想的。
 穏やかで淡い景色が、次々と変わっていくような流れ。
 懐かしい感じのメロディ。
 何かの回顧録のような、遠いところを眺めているような音。
 現代フォルクローレ、あるいはブラジル・ミナス音楽に共通するムード。
 南米の郷愁。
 これは名作でしょう。




posted by H.A.

【Disc Review】"Something Personal" (2015) Pawel Kaczmarczyk Audio Feeling Trio

"Something Personal"  (2015) Pawel Kaczmarczyk Audio Feeling Trio
Pawel Kaczmarczyk(piano) 
Macie Adamczak (Double Bass)Dawid Fortuna(drums)

輸入盤】Something Personal [ Pawel Kaczmarczyk ]パウェウ カチュマルチク

 ポーランド人ピアニストPawel Kaczmarczyk。
 冒頭の”Mr.Blacksmith”と言う曲。
 冒頭のハンマービートのようなリフ、乾いたスネアから出るエッジの聞いたリズム、重心の低い安定したベース・・・
 この手のイントロ聞くだけで、体が自然と動きだします。
 テンポが速ければ速いほどカッコいい。
 インタープレーに入った時の幾何学で作られたかのような清潔感ある疾走感と調和。
 ぐっと来ます。
 タイトルソングでもある3曲目の”Somrthing Personal”は、ヨーロピアンジャズファンであれば自然と受け入れられる音かと思います。
 聞き慣れないメロディでありながら落ち着いた音。
 ポーランド人にとっては自然な予定調和なのかな?と考えながら聞いたりしています。
 梅雨の時期、清涼なポーリッシュジャズ。
 いいですよ。




posted by N.A.

【Disc Review】“Supreme Collection” (2005-2014) Gretchen Parlato

“Supreme Collection” (2005-2014) Gretchen Parlato
Gretchen Parlato (vocal) and others
 

 ボーカリストGretchen Parlatoのオムニバス・アルバム。
 ウイスパー・ボイスと、ジャズ、ポップ、ブラジル、その他ものもろが混ざり合うクールな質感の今風のサウンド。声はもちろん、バックのサウンドも強烈な浮遊感の音空間。
 決してうるさくならないし、複雑なことをやっていてもわかりやすい。もの凄く高度、複雑怪奇っぽいことをさらっとやっている感じ。
 また、この人が歌うと多少メンバーや雰囲気が変わろうとも、あるいは人のアルバムであろうともこの人の世界。これだけ線の細いボイスなのに存在感は圧倒的。
 逆に線が細いからそうなのかな?思い入れ、思い込みを差し引いても、凄いボーカリストだなあ、と思います。
 さて、選曲、曲順は?
 ジャズ・ファンのサイドから見ると、へーこうなるんだ、といった内容。
 クラブ~ラウンジっぽいアレンジのポップ曲のカバーから始まり、ポップ寄りの曲が続き、中盤からはブラジル曲、スタンダード曲も交えつつジャズ、ボッサ色が強くなる編集。これが今の人、若い人たちにも受け入れらやすい音の優先順位なのかな?なるほどねえ。
 おっと、Nilson Mattaの”Valsa de Eurídice”が入っていないじゃん。
 ま、いずれにしても、新録音に勝るとも劣らない魅力のコンピレーション。お洒落なオシャレなカフェで流れていてピッタリの質感、BGMにしても決して会話や仕事の邪魔にならないさらっとした質感。でも中身は相当マニアック。落ち着いているようでリズムも結構強いしね。
 そんな音が私の近年のお気に入りの音なのでしょう。
 ジャズやらポップやらボッサやらアフリカやら、ざまざまテイストが入り混じる21世紀型のフュージョン・ミュージック、複雑で強烈だけどもあくまで軽快なリズム、熱くなっているようでどこか醒めた感じのクールな質感。
 私の思う21世紀型ジャズの典型のひとつ。

(※この投稿は2015/11/22から移動しました。)


posted by H.A.

【Disc Review】“Live in NYC” (2013) Gretchen Parlato

“Live in NYC” (2013) Gretchen Parlato
Gretchen Parlato(Vocal)
Alan Hampton (Bass) Taylor Eigsti (Keyboards, Piano) Mark Guiliana (Drums) Kendrick Scott (Drums) Burniss Earl Travis II (Bass)

Live in NYC
Gretchen Parlato
ObliqSound
2013-10-08
グレッチェン パラート

 コンテンポラリー系ジャズボーカリストGretchen Parlatoの最新作、ライブ盤。
 ピアノトリオを従え、過去のアルバムのベスト選曲でのステージ。
 はかなげ&怪しげで漂うようなウイスパーっぽいVoiceはそのまま、アレンジもスタジオ盤に近く、Jazzなのだろうけどもなんとなく妙な感じ。
 でも難しいわけではなく、軽快で、上品で優しい質感の音楽。
 新しいタイプのJazz。
 この人、Herbie Hancock閥なのでしょうか、前々作ではアフリカ音楽系ギタリストLionel Louekeが大きくフィーチャーされたり、前作のプロデューサーがRobert Glasperだったり、HerbieのButterfly やWayne ShorterのJujuを演ったりしています。
 元々Bossaを歌っていたのかもしれませんが、全編それっぽいウイスパー?ボイス。
 軽く聞き流しても心地よく、じっくり聞けば引き込まれそうな緊張感あふれる深い声、音。
 アレンジ~全体の質感は、Robert Glasper的な近代的都会的ジャズの色合いも強いのですが、ブラジル、アフリカ、ヨーロッパ辺りが入り混じったワールド系なテイストが加わります。
 かといって過度にマニアックではなく、あくまで、しなやかなリズム、柔らかな音使い、ほどよいポップ感。カフェで流れていても全く違和感のなさそうな音。
 心地よくさらりと聞けます。
 昔ながらのJazzよりもむしろSadeやErykah Baduなど、近現代Soul系に通じるのでしょうか?
 でも、もう少し軽くて明るくてマイルドな感じかな?
 やはり新しいタイプのJazzですね。

(※この投稿は2014/02/15から移動しました。)



ha50posted by H.A.
Profile

jazzsyndicate

【吉祥寺JazzSyndicate】
吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。
コンテンポラリー ジャズを中心に、音楽、映画、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

記事検索
タグ絞り込み検索
最新記事
  • ライブドアブログ