吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2015年11月

【Disc Review】“Stories To Tell” (1974) Flora Purim

“Stories To Tell” (1974) Flora Purim
Flora Purim (voice)
Oscar Neves (guitar) Earl Klugh (guitar) Carlos Santana(Guitar) George Duke (Keyboards, Synthesizer) Larry Dunlap (Piano)
Ron Carter (bass) Miroslav Vitous (Bass, Synthesizer)
Airto (Drums, Percussion) King Errisson (congas)
Oscar Brashear(Flugelhorn) Raul De Souza (Trombone) George Bohanon (Trombone) Hadley Caliman (Trombone,Flute) Hadley Caliman (Flute) Ernie Hood (Vocal, Zither)

Stories To Tell
Universal Music LLC
2006-11-15
フローラ プリム

 世間一般では人気があるのでしょうか?
 私的には大好きなFlora Purimの音楽。
 ブラジル音楽大好き、エレクトリック・マイルス大好きジャズファンとしては当然の好み、と言うか大当たり。
 特に1970年代前半のアメリカン・フュージョン色が強くなる前、この辺りのアルバムがものすごくカッコいい。
 わかりやすくてポップでブラジル色の強い“Light as a Feather” (Oct.1972) Chick Corea and Return to Forever、それにエレクトリック・マイルス系の攻撃性をほんの少しだけ混ぜた・・・ってな感じ。
 ポップと言ってもポップス的な感じでは無く、カチッとしたアメリカン・フュージョン的でもない、ブラジル風味がふんだんな、わかりやすいボーカル&ジャズ・フュージョン。
 シンセとかエレピとかエレキギターとかは入りますが、あくまでアコースティックな質感。
 なによりリズムが柔らかい。
 もちろんミュージシャンはジャズの一線級の人が中心だから、出てくる音はハイレベルなジャズの香りが濃厚。
 ウッドベース、ピアノ、ドラムにパーカションがフィーチャーされるリズム、素直な4ビートは無いけども、何となくジャズっぽい、しかもブラジル的な柔らかさが前面に出るリズム。
 グルーブも上品ながら強いし、インプロビゼーションは強力、盛り上がる時には一気にお祭り騒ぎ。
 時折り入る歪んだギター(Santana!)やシンセ、サイケな感じはご愛嬌。
 JobimやEdu Loboなどのボサノバ・スタンダードも何か新しい感じ。
 これは気持ちいいし楽しいわ。
 その後、だんだん音の感じが変わっていって、アメリカン・フュージョン色が強くなってくる感じ、まあそういう時代の流れだったのでしょう。
 人気があるのはそれ系のアルバムなのかもしれませんが、私的にはこれぐらいの柔らかな音、ブラジル色はもちろん、ジャズの香りが強く残る音が一番カッコいいと思うなあ。




posted by H.A.

【Disc Review】 “Composing” (2015) Jean-Michel Pilc, Marilyn Mazur, Mads Vinding

“Composing” (2015) Jean-Michel Pilc, Marilyn Mazur, Mads Vinding
Jean-Michel Pilc (piano) Marilyn Mazur (percussion) Mads Vinding (bass)
 
COMPOSING
JEAN-MICHEL PILC~MADS VIDING~MARYLYN MAZUR
STORYVILLE
2015-09-23


 Marilyn Mazur絡みピアノトリオ、他のメンバーはヨーロピアン、ということで、お気に入りの“Celestial Circle” (2010)あたりの雰囲気を期待して聞いてみました。
 なるほど、予想していたのとはちょっと違うのだけども、少し変わったピアノトリオ。
 明るくやんちゃな不思議なジャズ。
 冒頭はルバートっぽい浮遊感の強いイントロからスタート。おっ、綺麗なフリー、好みの展開、と思っていると先に進むにつれ、少し雰囲気は違ってきます。
 フリーっぽい色合いも強いのかなと思いきや、基本的にはベースとドラムがキチンとしたビートを刻み、その上でピアノが自由に飛び跳ねていくイメージ。
 しっとりとした感じが前面に出るわけではなく、基本、元気系。
 特にベースがオーソドックスというか、リズムもコードも崩さない演奏で、遠くに行ってしまいそうな二人を引き留めている感じ。
 ピアノは透明感のある音でシャキッとした音使い。エコー強めだけども明るい色合いの録音、キラキラと艶やかに輝く感じ。
 クラシックの香りがするのはいかにもヨーロピアンっぽいとして、耽美的に内省的に・・・のタイプではなく、元気いっぱいやんちゃに弾いてみまーす、ってな感じ。
 強いタッチ、鋭いリズムで素直な感じで弾いているようで、だんだんコードから外れていったり、フリーっぽくなったり、ガンガン弾いてみたり。
 かといって奇妙な感じではなく、基本はきれいな音、音使い、明るい雰囲気。いかにもフランス系の人、って感じですかね。
 曲はオリジナルにスタンダードが少々。
 スタンダードは少々変わったアレンジ、オリジナルは抽象度が高いモノの中と美曲が入り混じる構成。ぼーっと聞いていると突然美しいメロディが出てきてドキッとする感じ。
 全体の印象としては、ジャケットもそうですが、何だか「白」くて明るい感じ。フランスの他のピアノの人もそんな感じだったかなあ。
 ということで、明るくて、少々ひねくれたピアノトリオ。


※違うトリオですが・・・

posted by H.A.

【Disc Review】“Black Orpheus” (2013) Nilson Matta

“Black Orpheus” (2013) Nilson Matta
Nilson Matta (bass)
Klaus Mueller, Kenny Barron, Alfredo Cardim (piano) Randy Brecker (trumpet) Anat Cohen (clarinet) Laura Metcalf (cello) Anne Drummond (flute) Guilherme Monteiro (guitar) Alex Kautz, Erivelton Silva(drums) Fernando Saci, Reinaldo Silva, Jorjao Silva (percussion) Leny Andrade, Gretchen Parlato (vocal.)
 
ニルソン マッタ

 ブラジル人ベーシストNilson Mattaが豪華メンバーを集めたブラジル音楽集。
 決して彼を追いかけているわけではないのですが、なぜか私の好みの音を作ってくれる人のようで、サポートメンバとしての参加含めて結構聞いています。
 ブラジル人のジャズっぽいミュージシャンであればなんでもOKといった感じでもないのに(ん?実はそうなのかもしれない?・・・)不思議なものです。
 Nilson Matta、Don Pullenのバンドにいたり、ジャズのビッグネームとも良く演奏している(Harry Allen, Kenny Barron, Joe Locke・・・)バンドTrio Da Pazのメンバー。ジャズ、ボッサのベーシストとしては大御所なのでしょうかね。
 冒頭のJobimメドレーから凝ったアレンジ。きちんと譜面にしたと思われる緻密なアンサンブル。
 なるほど、室内楽的ボッサか・・・と思いきや、以降はインタールドにちょっと変わった短い曲をはさみながらも、リラックスした雰囲気のスッキリ系ジャズ・ボッサ。
 曲はJobim, Luiz Bonfáなどのブラジリアン・スタンダード。編成はピアノトリオ+ギター+ホーンが基本、ボーカル曲は1/3ぐらい。
 と書いてしまうとありがちなジャズ・ボッサ・アルバム、確かにその通りなのですが、曲によって主役が変わる構成。ピアノだったり、クラリネットだったり、トランペットだったり、ボーカルだったり。
 まるでジャズ・ボッサの一人オムニバス・アルバム。
 もちろん全体を通じて質感は一定しているのですが、目先が変わって退屈なし。
 そして中盤に置かれたトドメのGretchen Parlatoの必殺voice。
 これはカッコいい。



posted by H.A.

【Disc Review】“Flood” (2008) Avishai Cohen

“Flood” (2008) Avishai Cohen
Avishai Cohen (trumpet)
Yonatan Avishai (piano) Daniel Freedman (percussion)
 
Flood
Avishai Cohen
Anzic Records
2008-10-21
アビシャイ コーエン

 イスラエルのトランぺッターの変則トリオ。
 強烈なジャズ?かと思いきや、穏やかな室内楽的なジャズ。
 メロディが何だか変わっていて、これがイスラエルっぽいメロディ・ライン?この人が参加している”Third World Love”もこんな感じだったかな?
 本作は基本的には全編バラード。
 しっとりとしているんだけども、決して甘くは無いし、クールでもない。取っ付き易い訳でもない。リズムもシンプル。素朴な質感。何となく日本的な感じもちらほら。
 そんなメロディをキレイで張りのある音のトランペットが淡々と。
 インプロビゼーションも決して熱くなるわけでは無く、あくまで淡々と、でも丁寧にメロディを紡いでいく感じ。
 この人、激情系だったように思っていたのですが、全く違う表情。
 サイドの二名も同様。強烈に弾いたり、奇をてらった展開をするわけではなく、あくまで淡々と丁寧に。
 結果、全体に郷愁的なものが流れていて、聞いているとなんだか懐かしい風景が浮かんでくるような感じ。空間が優しく、温かくなっていく感じ。
 第一印象は地味、正直よくわからなかったのですが、何度か聞いているうちにこの穏やかで優しげな空気感が見えてきました。
 これ以上吹いたり弾いたりすると、何か別の音になってしまうのかな。そんなデリケートで微妙なバランス、質感。
 ジャケットの湖は枯れていますが、音はゆるーい風が吹く、穏やかな湖面の風景。


※こちらはキリッとしたジャズなので、雰囲気が全く違いますが・・・


posted by H.A.

【Disc Review】“We Are The Drum” (2015) Kendrick Scott Oracle

“We Are The Drum” (2015) Kendrick Scott Oracle
Kendrick Scott (drums)
Taylor Eigsti (piano, Rhodes) Michael Moreno (guitar) John Ellis (saxophones) Joe Sanders (bass) Lizz Wright (vocals)

We Are the Drum
Kendrick -Oracle- Scott
Blue Note Records
2015-09-25
ケンドリック スコット オラクル



 人気ドラマーKendrick Scottのレギューラーバンド、2015年作。
 ボーカリストGretchen Parlatoや、ギタリストMike Moreno、さらには山中千尋まで、いろんなバンドでよく叩いている人。
 Herbie Hancock系、Robert Glasper系人脈の人なのでしょう?
 いかにもなニューヨーク系コンテンポラリージャズ。
 全体の雰囲気はジャズだけど、ポップ風味、クラブ風味などなどを自然に取り入れた、いかにも今の音。
 なにやら複雑なビート感。
 といっても難解さはなくサラッと気持ち良く聞けるのですが、何拍子かよくかわらん・・・
 また、テーマやって、交代でアドリブ・・・ってな感じの伝統的なスタイルでは無く、アンサンブル中心・・・
 かと思いきや、気が付くと誰かがカッコいいインプロビゼーションが始まっている・・・
 そんな新しい感覚のバンド。
 ふわっとした曲調、何やら複雑な構成から始まり、シンプルなリフを繰り返す展開に移行、その上で各人がインプロビゼーションを展開しつつ、全体のテンション、音量が上がり、最後は大盛り上がり・・・ってな感じの曲が多い。
 実験的?な音作りやら、ミニマル色をやりつつ、ポップ風味、ソフトヴォーカルのソウルなども組み込みつつ、しかし、昔ながらのインプロビゼーションのカッコよさも残しつつ、とにかく盛り上げる・・・ってな、感じ。
 ある意味サービス精神の塊。
 21世紀型、あるいは2015年型ジャズ、その代表選手、そんな一作。




posted by H.A.

【Disc Review】“Big Band Record” (1994) Ray Anderson

“Big Band Record” (1994) Ray Anderson
Ray Anderson (trombone) George Gruntz (piano)
Lew Soloff, Ryan Kisor, John D'Earth, Herb Robertson (trumpet) T Sal Giorgianni, Tim Berne, Marty Ehrlich, Ellery Eskelin, Larry Schneider (saxophone) Art Baron, Dave Bargeron (trombone) Dave Taylor (bass trombone) Howard Johnson (Tuba, Baritone Sax) Mark Feldman (violin) Drew Gress (bass) Tom Rainey (drums)
 
Big Band Record
Ray Anderson
Rhin/Mesa/Bluemoon Records
1994-04-19
レイ アンダーソン

 知る人ぞ知るとんでもないトロンボーン奏者Ray Anderson。
 何がとんでもないかというと、とにかくうまい。
 音がぶっとい、キレイな音からダーティーな音まで多彩な音色、グルーブが強烈、抑揚がすごい、変幻自在な表現力、早く吹けるのは当たり前として、個々のフレーズがカッコいい、起承転結が明快でドラマチックなソロ展開、オーソドックスからアバンギャルド風まで何でもこい・・・などなど、カッコいいところをあげたらキリがないぐらいに凄い演奏者。
 トランペットやサックスなども含めた管楽器の演奏者、古今東西、全員集めても五指に入るんじゃない?と思うカッコよさ。
 ということで、いいアルバムもたくさんあるのだけども、このアルバムはビッグバンド。
 もちろんワンホーン・カルテットとかトリオとかのほうが、トロンボーンを楽しめるんだろうけども、このアルバムが凄いのは、他の演奏者も同じぐらいに凄いソロを吹いていること。
 名前を知っている人からそうでない人まで、ハズレなし。
 リーダーが乗り移ったかのような表現力の凄いソロの連続。
 リラックスして流れで吹いとけば何とかなるか・・・とかの雰囲気ではなかったのだろうかなあ?
 管楽器のインプロビゼーションかくあるべし、のショーケース、とまで言うと大袈裟かもしれませんが、まあそんな演奏集。
 ここまで集まると、曲がどうのとか、アレンジがどうとか、あまり気になりません。
 いつものファンクっぽさが薄くてジャズ色が強くて・・・とか、コンテンポラリー系のビッグバンド・アレンジが・・・とか、考えるのがばかばかしい。
 とにかく痛快。
 分厚いアンサンブルの音塊に、ド熱い管楽器のインプロビゼーション。
 涼しくなったこの季節にはピッタリ。



posted by H.A.

【Disc Review】“Hommage A Eberhard Weber” (2015)

“Hommage A Eberhard Weber” (2015)
Pat Metheny (guitar) Jan Garbarek (sax) Gary Burton (vibes) Scott Colley (bass) Danny Gottlieb (drums) Paul McCandless (oboe,ss) Eberhard Weber (bass) SWR Big Band

Hommage a Eberhard Weber
Various Artists
ECM
2015-09-11


 ECMの看板ベーシストEberhard Weberへのオマージュ・コンサート。
 Pat Methenyを含めた懐かしいメンバー、ECMオールスター。
 ヨーロピアン・コンテンポラリー・ジャズのサウンドを作った代表者のひとり。
 ブルージーでごつごつしたアメリカンジャズや、カチッとしたアメリカンフュージョンとは全く別の柔らかい質感の音。
 上品なクラシックの香りや、柔らかいリズム。
 難解で気難しいものも少なくないヨーロッパものの中で、この人の場合は、緊張感があっても明るい雰囲気、といったところが特徴でしたかね。
 ふわっとした空間が広がる音。
 絵画的な音。
 深い森の中、あるいは草原だったり、時には水の中、はたまたしんとした夜の雰囲気だったり。
 Pat Metheny Groupにも相当強い影響を与えたのは間違いない所。
 そんな御大の名曲群をこのメンバーでやるとどうなるか?
 まあ、想像通りと言えばその通り。
 ゴージャスなビッグバンドの上の匠たちのインプロビゼーション。
 いまだ絶好調、張り詰めた音のJan Garbarekが登場すると緊張感が走るし、Gary Burtonが叩くと華やいだ雰囲気に。
 Paul McCandless が吹くとなんだかのどかで懐かしい雰囲気。
 Pat Methenyは少々抑え気味、神妙に弾いている感じですかね。
 全体の雰囲気はEberhard Weberオリジナルの音に比べるとどことなく暗くて重々しい感じ?
 音が厚いからでしょうかね?
 ポジティブに言えば、オリジナルのスペーシーな感じはそのままに、より重厚な演奏、ってな感じ。
 ところが一部で本人の演奏(録音)が流れると雰囲気が変わります。
 やはり、あの空気感、緊張感は高いのだけど明るい、なんとも微妙な雰囲気を作っていたのはEberhard Weber本人のベースの音そのものだったのでしょうね。




posted by H.A.

【Disc Review】“Don Juan's Reckless Daughter” (1977) Joni Mitchell

“Don Juan's Reckless Daughter” (1977) Joni Mitchell
Joni Mitchell (Vocals, Guitar, Piano, Keyboards)
Jaco Pastorius (Bass, Bongos, Cowbells) John Guerin (Drums) Larry Carlton (Guitar) Michel Colombier (Piano) Wayne Shorter (sax) Larry Carlton (guitar) Don Alias, Manolo Badrena, Alex Acuna, Airto Moreira (Percussion )  and others

Don Juan's Reckless Daughter
Joni Mitchell
Rhino/Wea UK

ジョニ ミッチェル

 Jaco Pastorius繋がりで、彼の最高の演奏が収められているアルバム。
 正直、Joni Mitchellについては詳しくありません。
 それでもこのアルバムは、私の知る限りの全ジャンルの音源の中でも最もお気に入りアルバムのひとつ。
 ジャンル分けするとすれば、ボーカル入りジャズ・フュージョンか、ジャジーなフォーク、ポップといったところなのでしょうが、それではピンときません。他に類が無いような独特の音作り。
 Joni Mitchellのアルバムでも近いのは”Mingus”(1979)ぐらい。
 近いメンバー、曲のライブ”Shadows And Light” (1979)ですら雰囲気が違うし、近い時期の他のアルバムは全く別の質感の音。
 何か似たような音源あったかなあ、と考えても思いつかない。
 そのくらい特別なワン&オンリーな音。
 私にとっての主役はJoni Mitchellのギターと、Jaco Pastoriusのベース。
 この2つの楽器の絡み方が唯一無二、このアルバムでしか聞けないカッコよさ。
 適当な形容詞を探せばスペーシー。
 ギターのコードカッティングの音が空間に広がり、その上を丸っこいベースの音が、大小さまざま、色とりどりのゴムまりのように飛び跳ねる、そんな感じ。
 リバーブが強い録音の影響が大きいのでしょうかね、とにかく心地よい音空間。
 さらに上品ながら強烈なグルーブ。
 Jacoのリズム感、音符の置き方のカッコよさは言わずもがな。
 彼が音のイメージを決めているのは間違いないのでしょうが、ギターももの凄くいい感じ。
 コードストロークだけでここまでカッコいいと思わせるギターは滅多にありません。
 もちろん本来の主役の歌もメロディも申し分ありません。
 フォークっぽい素朴な音の作りだと平板な感じがしてしまうのかもしれませんし、加工しすぎるといやらしくなるのでしょうが、いい感じで自然な感じのエフェクティング。
 特にコーラス、そしてリバーブの使い方がもの凄くいい感じ。
 ということで、この二人の存在感が圧倒的であることは間違いないのですが、Jacoが入っていない曲を含めて全ての曲が素晴らしい。
 豪華なオーケストラが入った長尺曲や、パーカションが乱打されるエスニック系やら、弾き語りやら。
 ここまで多彩だと散漫になってしまいそうですが、そんな印象は全くなし。
 それぞれにカッコいいし、統一感もあるし、曲の配置も完璧。
 元々アナログ二枚仕様ではありますが、CD一枚で通してスルッと聞けてしまいます。
 まさに芸術品。
 これ、40年近く前の音源なんだなあ・・・改めて驚き。

 




posted by H.A.

【Disc Review】“Forecast: Tomorrow” (1971-1985) Weather Report

“Forecast: Tomorrow” (1971-1985) Weather Report
Joe Zawinul (Keyboards) Wayne Shorter (Saxophone) and more

Forecast: Tomorrow (Bookset)
Weather Report
Legacy Recordings
2014-09-16
ウェザー リポート




 Weather Reportのベスト盤。まあ、なんとも凄い4枚組。
 ジャズ、フュージョンの入門盤とはならないのだろうけども、1970年代から1980年代の空気感がびっしり詰まったアルバム。
 あまりベスト盤、オムニバス盤は好んで聞きません。
 たぶん曲ごとに雰囲気が変わることがスッキリしないから。
 でもこのバンド、この構成であれば文句はありません。
 一枚ごとに時代的に分れており、メンバー編成は多様ながら、それなりに統一感があるから。
 一枚目から順次に聞いていくと、バンドの進化、変化の過程が面白い。
 また、時代感の変化が面白いし懐かしい。
 1960年代ジャズの香りを残しつつ、混沌、アバンギャルド、新たなものを求めてごちゃごちゃしながら、強烈にエネルギーを放出する1970年代前半。
 妖しさとポップさを混ぜ合わせたような時代を経て、整理され、計算しつくされたような1970年代後半から、さらにはその色が強くなり、よきアナログ時代からデジタル時代への移行期、そして、カチッとまとまってしまった1980年代。
 そんな時代感が一枚ずつ、ぎっしり詰まっています。
 選曲は好みが分かれるのでしょうが、オリジナルアルバムでは結構入っていた実験的な演奏が省かれている感じなので、聞き易くていい感じ。そうでもない?
 それなりに濃いなあ・・・
 エレクトリック・マイルスの発展型、ちょっと難解さ、気難しさが残る一枚目がカッコよく思えれば、過激系、フリージャズ系にも入っていけるかな?
 ある意味、マニアへの登竜門かも。
 二枚目はちょっとこだわりの最高にカッコいいジャズ・フュージョン。
 三枚目はさらにポップ寄りになった、終盤はデジタル臭も出てくるフュージョン・ミュージック。
 好みはさまざまでしょうが、その日の気分でチョイスできる便利なセット。
 全部通して聞けば(とてもしんどくてできませんが・・・)一気に時代を駆け抜けるタイムスリップ、そんな感じ。
 それにしてもこのバンドのベースとドラムはどの時代も凄いなあ。
 どのメンツも強烈なノリ。
 初期のMiroslav Vitous, Alphonse Mouzon, Airto Moreiraの組み合わせは強烈にエネルギーを発散する爆発的なリズム、言わずもがなの黄金コンビJaco Pastorius, Peter Erskineは軽快でありながら凄まじいグルーブ、推進力。
 どれが好みか?やっぱりJacoの時代かなあ・・・アルバムではライブを除けば”Night Passage" (1980)。
 ファースト・アルバムや直後の東京のライブ盤も大好きなんですがね。
 なお、一枚はDVD、Jacoのいる絶頂期のライブ映像。こりゃスゲーや。
 当たり前だけど“8:30” (1979)と同等、ドラムの音の抜けがいいので、音源としてはこちらの方がいいかな?
 もし生で見ていたら生涯最高のライブだったかもしれんね。 



posted by H.A.
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