吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2015年10月

【Disc Review】“Archivi Sonori” (2003) Maurizio Rolli

“Archivi Sonori” (2003) Maurizio Rolli
Maurizio Rolli (Bass)
Diana Torto (Vocals) Mike Stern (Guitar) Gianluca Esposito (Soprano Sax)Bob Mintzer(Soprano sax) Angelo Canelli (Piano) Otmaro Ruiz (Piano) Paolo Corsi (Drums) Danny Gottlieb (Drums) Israel Varela (Palmas & Cajon)
 
ARCHIVI SONORI
MAURIZIO ROLLI
WIDE SOUND
2009-04-13
マウリッツォ ローリ

 イタリア人ベーシストのコンテンポラリージャズ作品。
 Mike Stern 目当てで聞いてみましたがMikeさんは二曲のみ。その意味では残念でしたが、さておき、全編カッコいい今風のジャズ。基本的にはソプラノサックス+ピアノトリオ+ボーカルのアコースティックジャズ。イタリアっぽい?美曲、哀愁曲を中心に、無国籍系、不思議系、ロック系まで、さまざまな楽曲。
 スキャット中心のソプラノボイスが妖しげな雰囲気を醸し出し、エキサイティング系ソプラノサックスをこれまたエキサイティング系で強烈なリズム隊が支える展開。
 有名どころのゲスト陣を除けば初めて聞く人ばかりですが、演奏はもちろん一級品。
 リーダーのベースはエレキも使っていますが、ウッドベース中心でオーソドックスな感じも強いジャズスタイル。強烈にバンドを引っ張るといった感じではありませんが、大きめの音の録音も手伝ってボコボコと心地よい。
 曲はオリジナルが中心。いかにもヨーロピアン、それも南の方のちょっと明るめなのだけどもほのかな哀愁。甘くて少々ベタつき気味の哀愁曲と、強烈でアグレッシブな演奏がいい感じのバランス。この組み合わせが、ありそうでなかなか少ない。
 アグレッシブ系の演奏だと無愛想な曲が多いし、曲が甘めの場合は演奏が抑制気味。甘めの曲をアグレッシブに演奏すると一番カッコよくなると思うんですがねえ・・・
 アメリカ系のコンテンポラリージャズと比べると落ち着いていて洒落ているし、ドイツや東欧、北欧系にありがちな沈痛さや小難しさはなし。
 いずれにしても、やはり曲がいいとカッコいい音楽なるなあ。




posted by H.A.

【Disc Review】“Molde Concert” (1981) Arild Andersen

“Molde Concert” (1981) Arild Andersen
Arild Andersen (bass)
Bill Frisell (guitar) John Taylor (piano) Alphonse Mouzon (drums)
 
Molde Concert
Universal Music LLC
アリルド アンデルセン 



 あまり有名ではないアルバムなのかもしれませんが、ものすごい演奏。
 メンバーはオールスター、悪いはずはないのですが、しっとりしたヨーロピアンジャズか?フリーっぽいのか?はたまた民族音楽系か?と思うと大違い。
 ハードロック。
 エレクトリックマイルス、あるいはウェザーリポートの発展系。
 それも超攻撃的バージョン。
 まあ、リーダーのベースの派手さ加減を考えるとこれもあるかな、と思いながらも、ちょっと想像できない凄まじさ。
 ディストーションが効いたギターがギュインギュイン。
 Bill Frisellってこんなギターだったけ?歪んだ音でチョーキング使いまくり。
 でも音がキレイでフレーズはメロディアス。
 バックに回ると例の漂うようなスペーシーな音作り。
 ロック的なギターが苦手になってしまった私にとっても文句なしにカッコいい演奏。
 さらに、ピアノがガンガンゴンゴン、でもソロになると格調高いいつものJohn Taylor。
 ドラムはもちろんウェザーリポート的だったり、エレクトリックマイルス的だったり。
 終始攻撃的で激しいドラム。
 その上で、リーダーのベースはあくまでジャズっぽい。
 なんだかんだで4ビートが特にカッコいい。
 ウォーキング云々・・・といった大人しいニュアンスではなく、後ろからものすごい力で押しまくられているような感じの推進力。
 4ビートはもちろん8ビート系でも超強力。
 もちろんウッドベースで。
 さらにソロになると誰もマネできないようなエキサイティングな展開。
 超攻撃的。
 メンバーも必死にくらいついていき、結果、大爆発・・・
 そんな演奏がぎっしり。
 曲は4ビートを絡めつつも、プログレッシブロックっぽかったり、フォークロックっぽかったり、ウェザーリポートっぽかったり、さまざまな表情。
 ジャズファンよりロックファンのからの方が受けがいいんだろうなと思いつつも、最高にエキサイティングでカッコいいあの時代のジャズ。
 もちろん今聞いても最高にカッコいい音楽。




posted by H.A.

【Disc Review】“This Is the Day” (2014) Giovanni Guidi

“This Is the Day” (2014) Giovanni Guidi
Giovanni Guidi (piano)
Thomas Morgan (bass) Joao Lobo (drum)

This Is the Day
Giovanni -Trio- Guidi
Ecm Records
ジョヴァンニ グイディ




 
 イタリア人ピアニストGiovanni Guidi、トリオでの最新盤。
 全編あの名画”New Cinema Paradiso”のような素敵な世界。
 大御所Enrico Ravaの近年のバンドでカッコいいピアノを弾いていた人。
 さすがにいい若手を連れてきたなあ、と印象に残っていた人。
 何か凡庸では無いモノを持っているのでしょう。
 流れからすればStefano Bollaniと同じキャリア。
 南欧系だけに、基本的には明るい感じが根底に流れていて、かつてのECMレーベルのピアニストに比べると少々異質。
 でもStefano Bollaniがカラッと明るい感じなのに対して、しっとり感が強いというか、落ち着いているというか。
 ブルース色が薄くてクラシックの香りが強いのはいかにもヨーロピアンなのですが、Bill Evans系な感じではなく、さらりとした質感が現代的。
 さて、全体的にはそんな感じなのですが、さすがにECM、強烈な浮遊感のルバートでのバラードがてんこ盛り。
 これがカッコいい。
 定まっているような、定まっていないような、伸び縮みするリズムで空間を作るベースとドラム、その中を浮遊する透明感のある美しいピアノの音。
 漂うような、こぼれ落ちるような儚い音。
 どこか遠い所に連れて行ってくれそうな、なつかしいような、とても美しい演奏が何曲も。
 少々抽象的だった前作”City of Broken Dreams”(2013)と比べると、同じく淡い色合いですが、メロディがはっきりした曲が多く、ちょっと面持ちが異なります。
 このレーベルでは定番的な展開ですが、かつてのハウスピアニストSteve Kuhn, Richie Beirachあたりと比べるとなぜか爽やか、穏やか。
 狂気や妖しさに欠けるといわれればそうかもしれませんし、もっと攻撃的な演奏でないと退屈、といった向きもあるのかもしれませんが、どことなく醒めている感じ、クールな感じがいかにも今風。
 こちらの方が聞き易くて、慣れてない人も引かずに自然に聞けそうな感じ。
 曲も地味ながらキレイで上品なモノ揃い。
 オシャレなBGMとしても使えるかな?
 もし強烈な美曲が2,3曲あれば、結構な人気盤、名盤になるんだろうなあ・・・
 でもそれだとクールじゃなくて今風でなくなるのかなあ・・・
 とにもかくにも、最近の超愛聴盤。
 とても気持ちが穏やかになる静音ジャズ。
 でも、なぜか夜では無くて、昼のムードの希少盤。



posted by H.A.

【Disc Review】“Mindset” (1992) Gary Peacock , Paul Bley

“Mindset” (1992) Gary Peacock , Paul Bley
Gary Peacock (bass), Paul Bley (piano)
 
Mindset
Paul Bley
Soul Note Records
2010-03-16
ポール ブレイ
ゲイリー ピーコック


 前掲の“Right Time, Right Place” (1990) Gary Burton , Paul Bleyで思い出して久々に聞いたアルバム。
 やはり時期も近かったようです。
 こちらはピアノとベースのデュオ。
 これまたゆったりとして落ち着いたバラードが中心の演奏。
 デュオといっても共演は半分以下で、他は各人のソロ。
 どんな意図の企画なのかはよく読み切れませんが、さすがに巨匠のお二人、アルバムとしてもまとまった音。
 先のアルバムに比べると、ビブラフォンがベースに変わった分、あるいはPaul Bleyが少々難解モードに入っている分、地味な印象ですが、それはそれで深い味わい。
 Paul Bleyはいつもの後ろ髪を引かれるようなスローバラードとモダンジャズ、フリージャズが目まぐるしく交錯するピアノ。
 序盤の”How Long”、中ほどに置かれた"Meltdown"、終盤の"Flashpoint", "Mind Set"など、期待を裏切らない美バラードも何曲か。
 饒舌なベースが薄くなりがちな空間を埋めていくような演奏が目立ちます。
 静謐な印象ながらも、沈鬱でも空虚でもない、豊かな音。
 思索的、耽美的、でも甘すぎない音。
 クールでアーティスティック、でも難解ではありません。
 一人のゆっくりとした時間にちょうどいい、素敵な音。



posted by H.A.

【Disc Review】“Right Time, Right Place” (1990) Gary Burton , Paul Bley

“Right Time, Right Place” (1990) Gary Burton , Paul Bley
Gary Burton (vibraphone) Paul Bley (piano)
 
Right Time Right Place
Gary Burton
Gnp Crescendo
1992-01-21
ゲイリー バートン
ポール ブレイ

 いかにもな組み合わせのECMなお二人。
 共演盤はたくさんあるのでしょうか?
 Paul Bleyさん次第では難解でぶっ飛んでしまいそうな可能性、無きにしもあらずの組み合わせですが、美しいバラードを中心とする佳曲の素直な演奏。
 ビブラフォンとピアノのデュオといえば、Gary Burton、Chick Coreaの共演盤が有名ですが、それらと比べて抑制された演奏。
 パーカシッブなイメージが強かったそれらに比べて、このアルバムはあくまでメロディアス、終始ゆったりとしたリズム。
 ちょっと刺激的が足らないといえばそうなのかもしれないけども、穏やかで心地よいバランス。
 Paul Bleyのピアノは独特の後ろ髪を引かれるようなタメと、徐々に拡散していくような音使いが相変わらずカッコいい。
 素直な音の流れから外れそうで外れてなくて、やっぱり外れて、でも気がつくともの凄く美しいフレーズが連発される・・・といったなんともいえない不安定さというか、安定というか・・・。
 やり過ぎると難解になるのでしょうけど、このアルバムでは全曲いい感じで収まった感じ。
 Gary Burtonの華やかさと安定感はいつも通り。
 全編通じてECM的な気難しさはなく、ゆったりと落ち着いて聞ける音楽。
 いわゆる名盤ではないのかもしれないけども、気楽に聞けるいいアルバムです。




posted by H.A.

【Disc Review】“That's For Sure” (2000) Marc Copland

“That's For Sure” (2000) Marc Copland
Marc Copland (piano)
John Abercrombie (guitar) Kenny Wheeler (flugelhorn)
 
That's for Sure
Copland
Challenge
2002-03-05
マーク コープランド

 前のアルバムと少しメンバーが違うこれまた室内楽的ジャズ。
 ピアノが入るとどんな感じになるのかな?思いながら取り出した一枚。
 ま、プレーヤー、音の組み立て方に拠るのでしょうが、結果はあまり変わありませんね。
 これも静かで上品、センチメンタルなジャズ。
 これはリーダーがMarc Coplandなのでしょうね。でも、これ見よがしな派手なことはせず、あくまでしっとりとした演奏。前掲の作品のギターがピアノに変わるときらびやかになるかなと思いきや、そうでもありません。他の二名の演奏を上品に支える演奏に徹しているようにも思えます。
 John Abercrombieのギターは少々寂しげ、寂寥感が溢れるいい味わい。この人難しい音楽を始めると難解になるし、元気が良すぎると妙にロック色、フュージョン色が強くなるのだけども、この手のメロディアスな音楽だと、オーソドックス、でもほどよい妖しさが出ていていい感じ。
 Kenny Wheelerはいつものテンションを押さえて、しっとりとメロディを置いていく感じ。
 結果、興奮するような音楽ではないし、ECMのような冷たさや緊張感、アバンギャルドさも薄いのだけども、その分安心して聞けるし、BGMとしてもピッタリ。さりげないんだけも、甘くて寂寥感のある各人のオリジナル曲が際立つ演奏。
 さらりとして、ほどほどにセンチメンタルな素敵な音楽。
 気持ち、周囲の空気が淀んできたときの清涼剤になる、かな?






posted by H.A.

【Disc Review】”It Takes Two!” (2005) Kenny Wheeler

”It Takes Two!” (2005) Kenny Wheeler
Kenny Wheeler (flugelhorn)
John Abercrombie (guitar) John Parricelli (guitar) Anders Jormin (bass)
 
It Takes Two
Kenny Wheeler
Sunny Side
2006-06-27
ケニー ホイーラー

 Kenny Wheelerがギター2本とベースを従えた静的なジャズ。
 フリーな曲も少しだけありますが、基本的にはメロディアスでキレイなバラード曲を静かに演奏するスタイル。
 ドラムレスなのはわかるとして、ギター2名にした理由は何だろう?ピアノだときらびやかになり過ぎるからかな?であれば、淡々とした味わいが出ていて大成功。寂寥感溢れる有名曲Love Theme from "Spartacus"がピッタリの音使い。他にもそんな感じのセンチメンタルな美曲がいくつか。
 基本、静かでしっとりとしている音楽ですが、それにピッタリのAnders Jorminのベース。この人が入ると静かな音楽にも何故か上品なグルーブが出ます。深いというか、揺れるというか、前に進むというか。音の置き方、強弱のつけ方に何か秘訣があるんだろうなあ。
 さらに抑え目の二人のギター。いずれも名手なのですがそれほど派手に前には出てきません。アコースティックギター中心で爽やかながら寂寥感が漂う味付け。アバクロさんの変態的な節回しも少なめ。拍子抜けと言えばそうかもしれないけども、さりげなく妖しさ、緊張感を加えるといった感じで悪くはありません。
 さて最後にリーダーのフリューゲルホーン。
 時折りの強烈なビヒャヒャーはいつも通りですが、このアルバムでは全体的に抑え気味。ちょっとふらつき気味だったり、枯れてきた感もあるのかもしれませんが、それはそれでいい味わい。
 といったことで、静かで淡々とした地味な室内楽的ジャズですが、極めて上質。
 秋の夜長、静かな時間帯にビッタリの落ち着いた音。
 深いなあ・・・




posted by H.A.

【Disc Review】“Cycles” (1981) David Darling

“Cycles” (1981) David Darling
David Darling (cello)
Collin Walcott (sitar, tabla, percussion) Steve Kuhn (piano) Jan Garbarek (sax) Arild Andersen (bass) Oscar Castro-Neves (guitar)
 
Cycles
David Darling
Ecm Import
2000-05-16
デビッド ダーリング

 ECMの隠れた名盤。
 現代音楽の色が強い?チェリストがリーダー、ECMオールスターがサポート。
 曲者揃いですので、どんな音なのか予想できませんが、聞いてみてもなんとも簡単には説明できない多様な内容。
 ともあれ、冒頭の”Cycles”は激甘、涙ちょちょ切れの大名曲。
 とても悲しい映画のテーマ曲、というより、そんなイメージよりもずーっと悲しく、美しく、奥が深い音。
 訥々したピチカートから始まり、シタールが絡み妖しげな雰囲気、さらに凜としたピアノが美しいメロディを奏で、三者で定まっているような、そうでもないような浮遊感の強い、でも美しい空間を作る。
 それだけもとても美しく、もの悲しく、感動的なのに、そこにリーダーのチェロのアルコが後ろの方の空間から引きずるような沈痛なテーマを展開。
 でも、そのままそこに居座るのではなく、消え入ったり、また現れたり。
 中盤以降はボリュームが上がり、前面へ、でも気が付くとまた消えていて・・・。
 その間もずっと淡々としたベース、ピアノとシタールの美しくて妖しい絡み合いが続く・・・
 なんとも奥ゆかしいというか、聞けば聞くほどはまっていきそうな深い音。
 ってな感じで涙々、沈痛の約七分間。決してこれ見よがしな派手な演奏はないのだけども、何度聞いても飽きません。
 後続は少し現代音楽、フリージャズの色の濃い演奏。
 無国籍、ノンジャンルな音。
 でも混沌はわずかで、基本的にはピアノが透明な空間を作り、その中でチェロ、サックス、シタールなどが自在に色づけしていく感じ。
 サックスが前面に出ると北欧系の厳しい感じだったり、ピアノが前面に出ると上品なヨーロピアンジャズっぽくなったり、さまざまな表情。
 特にSteve Kuhnのピアノ、このアルバムでは決して音数は多くないのですが、ゆったりとしたテンポの上に、後ろ髪を引かれるようなタメの効いた音の置き方、微妙な音の変化でもの悲しさと美しさ全開。
 リーダーのチェロの時折りの強烈に感傷的な音使いとの絡みは絶妙。
 冒頭曲のような甘いメロディが他にもいくつか。
 どれも深い音、胸が詰まるような切ない音、奥の深い絡み合い。
 いずれにしても秋っぽい音、今の季節にはピッタリだなあ。



posted by H.A.
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