吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2015年06月

【Disc Review】”Equilibrium” (2012) Benedikt Jahnel TRIO

“Equilibrium”(2012)Benedikt Jahnel TRIO
Benedikt Jahnel (piano)
Owen Howard (drums) Antonio Miguel (bass)
 
Equilibrium
Benedikt Trio Jahnel
Ecm Records
2012-11-13
ベネディクド・ヤーネル




 最近お気に入りのドイツのピアニスト、Benedikt Jahnel。
 基本的にはヨーロッパの香りがする上品なジャズ。
 ヨーロッパ系のピアニスト、暗かったり重かったりする場合も少なくないのですが、この人は楽曲、フレージングともに明るく前向きなタイプ。
 繊細な感じのタッチ、クラシックの強い香り、いいタイミングで入る“タメ”の効いた音回し、控えめに入る高速フレーズのバランスがいい感じ。
 それらに加えて音が軽い。もちろんいい意味で。
 端正でセンチメンタル音の流れ、妖しさもほどほど。
 優しい感じがむしろ女性的かもしれません。
 似た感じのフレーズでもKeith JarrettSteve Kuhnが弾くとキツイ感じがしそうな所が、この人だと優しく感じられます。
 押しつけがましくないというか、自然に流れてくるというか。
 シンプルなようで複雑、乾いた感じのビート感は、いかにも現代的な若手の音作り。
 中ほどにECMの真骨頂、ルバート的なスローバラードも含まれています。
 シンプルなリフを繰り返しながらピークを作っていく感じの演奏が何曲かありますが、前作に当たる“Modular Concepts” (2007)と同様。
 波が押し寄せては引いていくような感じ。
 ドラマチックな感じなのですが、これも押しつけがましくなくて自然な感じ。
 それがこの人の一番の特徴かもしれません。 
 明るく元気な“Modular Concepts” (2007)もいいけど、ECMらしい影が差すこのアルバムも明暗のバランスがちょうどいい感じ。
 ジャケット写真ほど暗い感じではなくて、穏やかな海の波頭がきらめくような音、ってな感じですかね。
 本作はしっとり系ですが、ECM制作ではない“Bemun” (2006) Cyminologyや“Modular Concepts”を聞く限り、グルーヴィーで疾走感のある音も出来る人なので、今後いい楽曲、いいアレンジができてくれば、大化けしそうな予感・・・さて?




posted by H.A.

【Disc Review】“Phoenix” (2014) Cyminology

“Phoenix” (2014) Cyminology
Cymin Samawatie (vocal) Benedikt Jahnel (piano) Ralf Schwarz (bass) Ketan Bhatti (drums) Martin Stegner (viola)
  
Phoenix
Cyminology
Imports
2015-03-03
シミノロジー




 前掲のBenedikt Jahnelが主要メンバーのバンド、Cyminologyの最近作。
 過去作品はVocal+ピアノトリオでしたが、今回はviolaを加えた編成。
 さて、このバンド、第一印象は中近東、アラビア音階っぽい聞きなれないメロディラインとペルシャ語?での妖しく聞こえる女性ボーカルが中心のワールドミュージック風。
 でも聞き慣れてくると、ボーカルが抜けた時の、繊細なジャズ感の対比が何とも言えず面白い。
 迷宮に迷い込んでいるんだけども、時折光がさすというか、視界が開けるというか。
 ピアノの清涼感がさらに強調されるというか。
 なかなか他には無いバランス。
 さらに本作ではviolaが前面に出るとまた違う質感(素直なクラシックっぽいのかな?)が出てきてこれも面白い。
 一枚で3種の雰囲気が楽しめるといった感じ。
 癖のあるメロディ、意味が読み取れない歌詞は取っ付きにくいのですが、異国、中近東辺り、非日常にトリップしたくなった時にはいい音。
 聴き込むと病み付きになるタイプの音なのかもしれません。
 なんだかんだで、基本的にはちょっと妖しいけど、上品な静音ジャズ。
 スタイリッシュな音。
 ピアノは相変わらず美しいし、violaもいい感じ。
 さて、見てくるのはヨーロッパの闇か?平穏な光か?



posted by H.A.

【Disc Review】“Modular Concepts” (2007) Benedikt Jahnel TRIO

“Modular Concepts” (2007) Benedikt Jahnel TRIO
Benedikt Jahnel (piano)
Owen Howard (drums) Antonio Miguel (bass)
  
ベネディクド・ヤーネル




 ドイツの若手ピアニスト、ちょっと新しい感じがするトリオ。
 このピアニスト、Cyminologyというバンドで、イラン系?の女性ボーカリストと中近東系~無国籍感の強い妖しくも素敵な音楽を展開中。
 それはそれでカッコいいんだけども、癖のあるメロディが薄くなった時に出てくる、綺麗なんだけどちょっと普通と違った感じのピアノトリオの音が気になっていました。
 ECMからもトリオ作を出していますが、このアルバムはその前の録音。
 たぶんEicherさんの厳しい指導が入る前?予想通りの綺麗な音。
 全体的にはいかにもヨーピアンっぽい美しい哀愁系のピアノトリオで聞き易いんだけども、ヨーロッパ的な重々しさが無くて前向きで明るい感じ。
 深刻に内に閉じこもるのでは無く、また、むやみにエネルギーを発散するのではなく、自然に外に開ける感じ。
 ブラジルのAndré Mehmariあたりにも通じそうな質感、あるいはKeith JarrettSteve Kuhnあたりの毒気を抜いたような。
 ジャズジャズした感じでは無く、クラシックの香りも強く、またフォーキー、素朴、上品、といったところが共通項でしょうか。
 各曲ごとに物語がありそうな音の組み立ても同様。
 クラシックの修練を積み、ポップスを経た今の世代の自然体の音なんでしょかね。
 音数は少なくないのだけども、近い世代のLeszek MozdzerTigran Hamasyan辺りよりも抑え目で線も細め。
 かえってサラリと聞けるのがいいところ。
 そこそこの緊張感はありますが、聞いていて疲れません。
 ECMから出ている“Equilibrium”(2012)も、同レーベルらしく少々暗めで緊張感は高まりますが、カッコいいピアノトリオです。
 もちろん同質ですが、本作の方が明るくてメロディ、展開がハッキリしている印象でとっつきやすいのかも。
 ま、お好みです。

 

posted by H.A.

【Disc Review】“Agora” (2010) Dani Gurgel

“Agora” (2010) Dani Gurgel
Dani Gurgel (voice) 
Débora Gurgel (Piano) Daniel Amorin (Bass) Thiago Rabello (Drums) André Kurchal (Percussion) Michi Ruzitschka (Cavaco, Guitar) 
Wagner Barbosa, Vinicius Calderoni, Demetrius Lulo, Rafa Barreto, Ricardo Barros, Leo Bianchini, Dani Black, Ricardo Teté, Tó Brandileone, Léo Versolato, Tatiana Parra, Danilo Moraes (voice, others) and others

Agora
Dani Gurgel e Novos Compositores
Boranda
2010-11-23
ダニ グルジェル




 今日的なブラジル音楽からボーカリストDani Gurgelの作品。
 MPB(ブラジリアンポップス)に属するのでしょう。
 MPB、ポップス色が強かったり、ゴージャス系のフュージョンだったりする場合が少なくなく、それらは好みには合わないのだけども、この人のアルバムはどれもナチュラルでいい感じ。
 もちろん、大御所の先輩方と比べれば相当モダン。
 ベースはファンクっぽいエレべだし、変拍子っぽいリズムがあったり、強烈なグルーヴ。
 でもあくまで優しい音。
 ピアノトリオとギター、木管のシンプルな組み合わせの力強くも自然な優しいグルーヴ。
 都会っぽいといえばそうなのだけど、どこかしらいい意味で田舎っぽい雰囲気もあり、どちらにも振れないいいバランス。
 今風のサンバだったりボッサだったりブラジル系だけでなく、アルゼンチンのフォークロアっぽい音も混ざっているのもとてもいい感じ。
 フュージョン風ではあるけど、何とも言えない弾むような独特のノリ。
 過剰にならないシンプルさがカッコいい。
 ・・・ってな感じで現代のブラジル~南米音楽のショーケースのような音。 
 バンド自体は、ピアニストの母上を含めて手練れたブラジリアンジャズの人たちだと思うのですが、柔らかいようでキリッとしている、ありそうであまりないバランスのカッコよさ。
 ドラマーなのか、ベーシストなのか、ピアニストなのか、誰が凄いのかは判断できないのですが、とにもかくにも、上品にグルーヴするカッコいいバンドです。
 ボーカルはいかにもなブラジル人女性ボーカル。
 ウイスパー系ではないけども、あくまで肩の力が抜けた、いい感じで鼻に抜ける可愛らしい優しげな声。
 本作は若手なのであろうさまざまコンポーザー、ボーカリストをゲストに迎えて多彩な色合い。
 各人のおそらくベストな楽曲をもってきたのでしょうから、キャッチ―なメロディ揃い。
 どれもポップで明るいのだけども、そこはかとなくSaudadeを感じさせるいい曲が揃っています。
 自然な演奏と根底に流れる心地よいグルーヴとあわせて安っぽさは皆無。
 大らかで前向き、今風、かつ上品な南米ポップス。



posted by H.A.

【Disc Review】”Softly, The Brazilian Sound” (1964) Joanie Sommers and Laurindo Almeida

”Softly, The Brazilian Sound” (1964) Joanie Sommers and Laurindo Almeida
Joanie Sommers (vocal) Laurindo Almeida (arrange) and others
 
ジョニー サマーズ

 初夏~梅雨に入るのかな・・・の微妙な季節、爽やかな夏を期待して1960年代、人気ボーカリストのボサノバアルバム。
 ありがちな企画、人気盤"GETZ/GILBERTO"の二番煎じ、なのかどうかは知りませんが素晴らしいアルバム。
 とても優しく柔らかい音楽。時代を感じさせる音も手伝って、何とも言えずノスタルジックでリラックスできる音。ギターを中心としたバンドにストリングスも加えた豪華な伴奏。その上にとても柔らかで可愛らしい歌声。Jobimナンバーを中心とした名曲たち。
 と、書いてしまうと、ありきたりのヤツね、とか、やはりAstrud Gilbertoでいいんじゃないの、との声が聞こえてきそうですが、このアルバムは一味違う。というか、私的には、数知れないその手のアルバム群の中では最右翼のお気に入り。
 甘ったるくてビブラートの強い声~ちょっと過剰な演出交じりの歌がいいのか?
 今の耳ではちょっと過剰で古臭いけども、なんとも優雅なアレンジがいいのか?
 たぶんその両方。
 見えてくる景色がリオでは無くて、カラッとしたロスのような気がするのも逆にいい感じ。
 ま、この手の音は野暮なことを考えないで、リラックスして聞いた方がいいですね。
 ノスタルジックで洗練された、あの時代の素敵なブラジル的アメリカンポップス。
 これはいいわ。



posted by H.A.

【Disc Review】“Sacred Ground” (2006) David Murray

“Sacred Ground” (2006) David Murray
David Murray (tenor saxophone, bass clarinet)
Lafayette Gilchrist (piano) Ray Drummond (bass) Andrew Cyrille (drums) Cassandra Wilson (vocals)

Sacred Ground
David Murray
Justin Time Records
2007-06-26
デビッド マレイ

 真っ黒けの音の兄貴David Murray、ドスの効いた姉御Cassandra Wilson。
 鬼も逃げ出しそうなお二人の共演。
 やはり凄まじい。いや、素晴らしい。
 もはや説明無用。




posted by H.A.

【Disc Review】“Glamoured” (2003) Cassandra Wilson

“Glamoured” (2003) Cassandra Wilson
Cassandra Wilson (vocals, acoustic guitar)
Terri Lyne Carrington, Herlin Riley (drums) Jeff Haynes (percussion) Calvin Jones, Reginald Veal (bass) Gregoire Maret (harmonica) Brandon Ross (banjo, guitar) Fabrizio Sotti (guitar)

Glamoured
Cassandra Wilson
EMI Europe Generic
2003-10-22
カサンドラ ウィルソン





 とても素敵なジャケット含めて何となく明るいCassandra Wilson。
 ルーツ回帰路線、ここまであっけらかんとポップになると凄みに欠けてくるのかもしれないけども、もともと凄みの塊のような人なので、これぐらいがいいのかも。
 1980年代の作品もソウルっぽいのがカッコよかったしね。
 Sting、Bob Dylan, Willie Nelson・・・、何を歌ってもCassandra Wilsonの世界。
 ここでは決定的にカッコいいオリジナル曲、高速アコースティックファンクナンバー“I want more”。
 これだけで聞く価値あり。




posted by H.A.

【Disc Review】“Traveling Miles” (1998) Cassandra Wilson

“Traveling Miles” (1998) Cassandra Wilson
Cassandra Wilson (vocals, acoustic guitar)
Doug Wamble (acoustic guitar) Eric Lewis (piano) Jeffrey Haynes, Kevin Breit (guitars, electric mandolin, mandocello, bazouki) Marvin Sewell (guitars, bazouki) Lonnie Plaxico (acoustic bass) Dave Holland (bass) Marcus Baylor (drums, percussion) Mino Cinelu (percussion) Perry Wilson (drums) Vincent Henry (harmonica) Olu Dara (cornet) Steve Coleman (alto sax) Pat Metheny (classical guitar) Angelique Kidjo (vocals) Regina Carter (violin) Stefon Harris (vibraphone)

カサンドラ ウィルソン

 名作“Blue Light 'til Dawn”(1993), “ New Moon Daughter”(1996)の続編。
 基本線はルーツ回帰路線、でも、Milesトリビュートということで高テンション系・・・と思いきやそうでもない。
 冒頭曲、あの”Run the Boo Doo Town”の凄いベースはあのDave Hollandご本人。これは来たかな・・・と思っていると以降は結構肩透かし、かなりポップ。
 終始Lonnie Plaxicoの強烈なウッドベースが唸りながらバンドを引っ張っているものの、全体の質感は軽快で明るい。静寂な瞬間も、ない。
 明るくなりながらもディープで迫力十分な前作までとはガラッとイメージチェンジ。
 以降、本作の路線。ここが現在までへの路線への転機、過渡期だったのかもしれませんね。




posted by H.A.

【Disc Review】“New Moon Daughter” (1995) Cassandra Wilson

“New Moon Daughter” (1995) Cassandra Wilson
Cassandra Wilson (vocals, acoustic guitar)
Cyro Baptista(percussion, Jew's-Harp, shaker) Dougie Bowne (percussion, drums, whistle, vibraphone) Gary Breit (Hammond organ) Kevin Breit (acoustic & electric guitar, banjo, bouzouki) Brandon Ross (acoustic & electric guitar) Charles Burnham (violin) Tony Cedras (accordion) Graham Haynes (cornet) Lawrence "Butch" Morris (cornet) Jeff Haynes (percussion, bongos) Peepers (background vocals) Mark Peterson (bass) Lonnie Plaxico (bass) Gib Wharton (pedal steel guitar) Chris Whitley (guitar)

カサンドラ ウィルソン

 怖がらなくても大丈夫。とても優しいボーカルアルバム。
 前作“Blue Light 'til Dawn”(1993)、一曲目の”Strange Fluit”、あるいは普通のジャズではない質感にビビってしまうと、優しくたおやかなCassandra Wilsonに出会えることはありません。
 ジャズ的ではないビート、聞き慣れないバンジョーやスチールギター、フォークギターの音も慣れてしまえば、これしかないよね、と思えてくるのが不思議なところ。
 モダンジャズの小粋さ、ジャズ的グルーヴ、女性ボーカルの可憐さ、あるいはノリのいいファンクなどを期待してはいけません。
 あくまでCassandra WilsonのNew World。
 少しダーク、寂寥感が漂う空間を全て包み込むような深いボイス。
 一曲目を含めて相当意味深なことを訴えているのかもしれないけども、前作“Blue Light 'til Dawn”(1993)よりも前向き、明るくなった空気感。
 Blue Note以降のCassandra Wilsonはこれが一番のお気に入り。






posted by H.A.

【Disc Review】“Blue Light 'til Dawn” (1993) Cassandra Wilson

“Blue Light 'til Dawn” (1993) Cassandra Wilson
Cassandra Wilson (vocals)
Brandon Ross (acoustic guitar) Charlie Burnham (violin, mandocello) Tony Cedras (accordion) Olu Dara (cornet) Don Byron (clarinet) Gib Wharton (pedal steel guitar) Chris Whitley (national resophonic guitar) Kenny Davis (bass) Lonnie Plaxico (bass) Lance Carter (drums, percussion) Kevin Johnson (percussion) Bill McClellan (percussion, drums) Jeff Haynes (percussion) Cyro Baptista (percussion) Vinx (percussion)

カサンドラ ウィルソン






 これは凄いアルバム。
 冒頭、演奏し尽されたスタンダード”You don’t know what love is?”。
 とぎれとぎれに鳴るアコースティックギターのみを背景に、大きなフェイクなしの歌。
 時折の静寂。
 それが凄まじい。
 静謐な空間を包み込むような淡々とした声。
 それだけで立ち竦んでしまうような凄み。
 強烈なベース、アコースティックギター、パーカッションを中心とした極限まで贅肉をそぎ落としたような演奏、ダークな空気。
 その中を漂い、包み込む声。
 “Blue Light 'til Dawn”のタイトルに偽りなし。 
 静謐ながら、座して聞かなければならない強烈な音楽。





posted by H.A.
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