吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2015年01月

【Disc Review】"Fabula" (1996) Maria João

"Fabula" (1996) Maria João
Maria João (voice)
Ralph Towner (guitar) Dino Saluzzi (bandoneón) Manu Katché (drum) Kai Eckhardt de Camargo (bass) Mario Laginha (piano) Ricardo Rocha (portuguese guitar)

Fabula
Maria Joao
Verve
2007-10-16
マリア ジョアン

 デビューから10余年?ジャズっぽかった前掲の“Cem Caminhos”(1985)からは大きく変化。
 ボーカルの表現力はさらに大幅に増幅。いったいどこから声が出ているのやらよくわかりません。
 裏返しているのか、鼻に抜いているのかよくわからない強烈な高音ボイスは、ここまで来ると普通のジャズやボサノバボーカルの範囲は逸脱。
 少し変わった音階の使い方も含めて、少々エキセントリックな彼女だけの世界。
 空間を漂うような浮遊感と、怒涛のように突っ走る疾走感が交錯するボイス。
 緊張感の塊のような凄みのあるボイス。
 オールスターのバンドは少し落ち着いた演奏ながら、不動のメンバー、夫君のグルーヴの強いカッコいいピアノを中心にした名演奏。
 Manu Katchéの少々ロックっぽいドラムがこのアルバムの色合いを決めているかな?
 いずれにしても多彩な楽曲を多彩な演奏でカラフルな音。
 普通のジャズではないし、ワールドミュージックと呼ぶには国籍が見えてこないし、ポップスっぽくもあるけども少々アバンギャルドに過ぎるか。
 メンバーからすればECMあたりのヨーロピアンジャズの音になりそうだけども、温度感は高目だし、それも違う。
 ま、Maria Joaoの音と呼ぶしかないのでしょうねえ。 



posted by H.A.

【Disc Review】“Cem Caminhos” (1985) Maria João

ブログネタ
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“Cem Caminhos” (1985) Maria João
Maria João (vocal)
Carlos Martins (sax) David Gausden (bass) Carlos Vieira (drum) Mário Laginha (piano)
 
Cem Caminhos
Maria Joao
West Wind
2014-02-18
マリア ジョアン




 吉祥寺のBar Foxholeで教えてもらったポルトガル人ボーカリストの初期?作品。
 何ともジャンル分けしづらい人。とりあえずコンテンポラリージャズと呼ぶしかないかな。
 このアルバムではMy Favorite Things、Take Fiveとかもやっているし、バックもサックスカルテット、素直な4ビートも何曲かあるので、ジャズっぽい。
 だけども何かちょっと変わっています。
 かといって奇をてらったアレンジをしているわけではないし、難解でもありません。
 何とも言えない不思議な質感。スタンダードには少々飽きが来ている身にとっては新鮮でカッコいい。
 リーダーのボーカルは表現重視?の超絶技巧。
 後の作品と比べるとまだまだ普通、強烈な高音ボイスは多用していません。
 スタイルを確立する前なのだと思いますが、それでも万華鏡のような表現力。
 さらに、バンドのメンバー全員がとてつもなく上手い。
 単に早く音が動くとかではなく、これまた表現力が豊か。
 普通っぽい音で普通っぽい演奏しても何かが違う。
 おまけに凄いグルーブ感、疾走感。
 世評がどうかはわかりませんが、私にとってはほどほどに普通で、ほどほどに変わった、お気に入りのコンテンポラリージャズボーカルアルバム。



posted by H.A.

【Disc Review】“Rio” (2008) Till Bronner

“Rio” (2008) Till Bronner
Till Bronner (trumpet)
Annie Lennox, Milton Nascimento, Vanessa Da Mata, Aimee Mann, Luciana Souza, Sergio Mendes, Melody Gardot, Kurt Elling (vocals) and others

Rio
Till Bronner
Uni Classics Jazz UK
2009-01-26
ティル ブレナー




 ドイツ人トランぺッターのブラジル音楽集。
 チェットベイカー風だったり、クラブジャズだったり、フュージョンだったり、なんでもやってしまうトランぺッターですが、このアルバムではボッサ~ブラジリアンポップス。
 これが都会的、現代的でいい感じ。
 Jobimの定番ナンバーも入っていますが、Toninho Horta、Joyce等々、現代の楽曲も織り交ぜながら、さながらブラジリアン名曲集。
 やっぱりブラジル人の書く曲は哀感(郷愁、saudadeですね)があっていいなあ。
 ゲストも多彩でいいミュージシャン、ボーカリストがたくさん。
 演奏は、ナチュラルな雰囲気が薄く、いかにもなポップスっぽく、あくまではクール。
 音の景色は、南米の森林や海岸では無くて、エアコンが効いたリゾートホテル、あるいは都会のオシャレなバー。
 その意味でものすごく良く出来た、現代的なブラジル音楽集。




posted by H.A.

【Disc Review】“Eréndira” (1985) “Cantilena” (1989) First House

“Eréndira” (1985) “Cantilena” (1989) First House
Ken Stubbs (alto saxophone) Django Bates (piano, tenor horn) Mick Hutton (bass) Martin France (drums)

Eréndira
Universal Music LLC
2009-02-25





Cantilena
Universal Music LLC
2000-11-16






 イギリス?のワンホーンカルテット。
 ECMにしてはまあまあオーソドックス、明るい印象のジャズバンド。
 バンド全体としては、Ornette ColemanやKeith Jarrettあたりの影響が強いのかもしれませんが、より分かりやすくなじみやすい。
 それでもヨーロッパのバンドならではの妖しさもそこかしこに感じられ、奥が深そうで退屈しません。
 イギリスのジャズに特別なイメージは持っていないのですが、ヨーロッパとアメリカの両大陸の中間、ちょうどそんな質感。
 アルトサックスがカッコいい。
 David Sanbornから歪みを除去したというのが適当かどうかわかりませんが、鳴りのいい伸びやかな音、メロディアスなフレーズとエモーショナルな抑揚。
 絶妙なタメとノリ、スピード感。
 ちょっと強めのエコーも心地いい。
 ピアノも只者では無い感が漂うフレージングと美しい音。
 リーダー作はアバンギャルドですが、ここのバンドではオーソドックスに美しく、時々激しい演奏。
 ドラムとベースも決して派手ではないのですが、いい感じの上品なグルーブ感。
 曲は美しいバラードから、Ornette風、Keith Jarrett風、などなど、バリエーション豊か。
 いいバンドだと思うのですが、作品はわずかのよう。
 ちょっとアブストラクト、妖しげで浮遊感が強い“Eréndira”(廃盤?)、より整った“Cantilena”、どちらもいいアルバム。



posted by H.A.

【Disc Review】“Confirmation” (2012) Django Bates' Beloved

“Confirmation” (2012) Django Bates' Beloved
Django Bates (piano)
Petter Eldh (bass) Peter Bruun (drums)

Confirmation
Django Bates' Beloved
Imports
2012-09-25
ジャンゴ ベイツ

 英国のピアニストのトリオ、最近作。
 ECMの”First House”でカッコいいピアノを弾いていたのは知っていたのだけど、アバンギャルド系の人だと思い(事実、そう。)避けてました。
 何の気なしに聞いてみたこのアルバムが凄まじい。
 チャーリー・パーカーナンバーが数曲ありますが、何の曲やらさっぱりわかりません。
 テーマはわかるのですが、超変拍子というか、小節すらもよく分りません。
 さらに加速したり、減速したり。
 が、ブレイクになるとピタリと合う。
 もちろん全編通じて、過激、アバンギャルドですが、いわゆる全編即興ではなく、ちゃんとルールと決めがあって、その上で暴れまくっているのでしょう。
 ピアノは超高速、変幻自在。ガンガンゴンゴン。
 でも音がものすごく綺麗。
 さらに、ベースがゴリゴリ。ドラムはバシバシ。
 凄いバンド。
 これは気持ちいいわ。
 あまりにも凄いので、疲れているときは避けて、気力、体力があるとき、半分だけ聞くといい感じかな?



posted by H.A.

【コンテンポラリーな日々】No.10 ~廃墟とコンテンポラリー・ジャズ Part.1~


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廃墟を美しいと感じるのは、廃墟に対する思考の逆説ではなく、意識の倒錯に近いものであろう
by S.I.  



 廃墟とコンテンポラリー・ジャズ。


 壮大なこじつけをしようたくらんでいるわけではありませんが、まァ、辛気臭い屁理屈になってしまう危険性も感じながら、語ってみたいと思います。

 私は廃墟ファンです。ここで廃墟論を展開しようとしたらあまりに長くなってしまうでしょうし、本が一冊書けてしまうかもしれませんので、それは控えましょう。


私が良く考えるのは、「なぜ自分はこれほど廃墟に魅かれるのか」です。実は明確な結論があるわけではありません。


 いろいろな語り口があるのですが、その廃墟の魅力のひとつとして、廃墟の存在は、それ自体が不条理であり、社会の矛盾そのものだ、ということです。


 先日たまたま「奈良ドリームランド」のニュースを目にしたのです。この遊園地は1961年に開園したそうですが、時代の変遷ととも、2006年には閉園になり、そのまま放置され、廃墟の仲間入りしたわけです。


 例えば人里離れた炭鉱の廃墟や「軍艦島」のように離島ならあまり大問題にはならないでしょうが、奈良ドリームランドの場合はその近くに実際に人々の生活があるのです。現在でも奈良ドームランド前というバス停があるようです。


 この廃墟の中は落書きが目立ち、カラスの楽園になっている風体でもある。ということは、不審者の巣窟になっている可能性もあり、近くに住む、特に小さなお子さんを持つ親にとっては、大きな心配の種だろうと思います。街の生態系や環境にも少なからず影響があると思います。

一度は奈良市がこの敷地の一部に火葬場を建設しようと計画したようですが、住民の反対運動で、結局頓挫してしまったとのこと。


 ニュースによると、奈良市はここを公売にかけ、再開発をしてくれる業者を募集したのですが、一社も名乗りを上げなかったようです。入札の金額が高いのか私には分かりませんが、入札した業者は園内のアトクションなどから全て撤去しなくてはならないのが条件のようですので、いずれにしろ膨大な予算が必要でしょうし、簡単には引き取り手は見つからないかもしれません。


 つまり、廃墟はまだ「生き続けている」ということです。


 廃墟は、人々の管理を離れ、放置され、侵食され、喧騒から遠いところでひっそりと死んだようにたたずんでいるだけ、と思いがちですが、特にこの奈良ドリームランドのように人間の生活がそばにあるとなると、様々な問題をかかえながら存在している。


 実を云うと、人里離れた廃墟や離島でも、いろいろな問題を抱えているのではないかと容易に推察できます。つまり私が云いたいのは、廃墟の存在そのものが矛盾であり、「在ってはならない」ものなのです。


 先述したように私は廃墟ファンなのですが、本当はそんなことを云うべきではないのか。廃墟好きなんてことは、仲の良い友人や家族にさえ云うべきでなく、じっと押し黙って、ただ遠くから眺めて心の中で楽しんでいるだけにすべきなのかもしれません。廃墟好きであることを自覚しながらも、その存在そのものを喜んで肯定するわけには行かないのです。


 日本は世界的にみればむろん経済大国、技術もトップクラスで比較的インフラも充実しているはずですが、こんな我が国でも廃墟は数多く存在します。
つまりは日本でも、先進国と呼ばれる国々でも、多くの矛盾と不条理が交錯し、絶望的な状況が社会のあちこちに点在してるのだ、ということ。廃墟はそのことを教えてくれる手掛かりの一つだと思うのです。

 実は、私が廃墟に魅力を感じる理由として、そのことがあると思えてならないのです。廃墟は単に見捨てられた無機物というだけではなく、ちょっと大げさに云うなら、現在の不完全な人間社会が生み出したひとつの結論でもあるということなのかもしれません。


 さて、あまりに長くなってしまったのですが、それがなぜ、コンテンポラリー・ジャズと関係があるのか。ひとつだけ云うなら、双方とも、矛盾を孕んだ存在であると思えてならないということです。


 続きはPart.2で語らせていただければと思います。



si50posted by S.I.

【Disc Review】“Batik” (1978) Ralph Towner

“Batik” (1978) Ralph Towner
Ralph Towner (guitar, piano)
Eddie Gomez (bass) Jack DeJohnette (drums)

Batik: Touchstones Series (Dig)
Ralph Towner
Ecm Records
2008-09-30
ラルフ タウナー

 凄まじいグルーヴ感。
 強烈な推進力のリズムの上で、ギターが吟遊詩人のように歌う。
 抽象的なようでメロディック。
 穏やかなようで感情的。
 クールなようでエキサイティング。
 でもやはり温度感は低め、今の季節、木枯らしのような音。
 シンプルな編成、贅肉全くなし。
 それでいて万華鏡のような音。
 
 

posted by H.A.

【Disc Review】“Of Mist And Melting” (1977) Bill Connors

“Of Mist And Melting” (1977) Bill Connors
Bill Connors (guitar)
Jan Garbarek (saxophones) Gary Peacock (bass) Jack DeJohnette (drums)

ビル コナーズ


 あまり話題にならないけども、とても素晴らしい名アルバム。CDは廃盤かな?
 緊張感、グルーヴ感が凄まじい。
 リーダーはChick CoreaのReturn to Foreverのメンバーですが、そちら含めて詳しい情報は知りません。
 このアルバムではあまり前面には出ないで、アコースティックギターを中心に、音楽のベース作りに徹している感じでしょうか。
 凄いのがJack DeJohnetteのドラム。
 やはりこの時期の彼は凄まじい。
 手数も多いのだけど、ノリが他の人とは全然違う。
 ひたすら叩きまくっているようでとても繊細、ヒタヒタと迫ってくるような強烈な緊張感。
 高排気量のFR車、後ろから押されるような加速が止まらない。
 Jan Garbarekはいつも通りの緊張感の塊のような厳しく激しい音、1970年代型。
 決して好みではないのだけど、この雰囲気に合うのは彼しかいないかも。
 いつものようにキツめだけども、周りのシャープでクールな音とのバランスがちょうどいい感じ。
 特に一曲目は、私にとっての彼のベストパフォーマンス。
 さらに、ECMの1970年代の音と言われて、真っ先に頭に浮かぶのがこの演奏。
 尖った氷のように冷たく厳しい質感のとてつもなくカッコいい音。
 アメリカン中心のメンバーながら、純アメリカンなジャズとは異質な強烈なグルーヴ。
 見えてくるのはヨーロッパの凍てついた白い森。

 
 

posted by H.A.

【Disc Review】“Invisible Cinema” (2008) Aaron Parks

“Invisible Cinema” (2008) Aaron Parks
Aaron Parks(Piano)
Matt Penman (bass) Eric Harland (drums) Mike Moreno (guitar)

Invisible Cinema
Aaron Parks
Blue Note Records
2008-07-24
アーロン パークス

 私的に近年のアメリカ系コンテンポラリージャズの代表作と思っているアルバム。
 特徴は「浮遊感」、あるいは「軽さ」(悪い意味ではありません)。
 何拍子かわからない複雑なビート、やたら手数が多いドラム。だけども個々の音は妙に硬質で軽く、うるさくない。
 微妙なタメがあるうえに強烈な疾走感のあるピアノ。
 が、強烈に打鍵する場面はあまりなく、あくまで流麗で柔らかな音の組み立て方。
 ヨーロピアン、クラシック、あるいはKeith Jarrettあたりの影響が強いのかなとか思いつつも、そうでもなさそうな新しいタイプ。
 さらに、Mike Morenoのギター。
 Pat Metheny的な艶のある丸い音の輪郭を明確にした感じの音色。
 早く弾きまくるのではなく、あくまでゆったりとフレージングを中心としながら、なぜか時折強烈な疾走感。
 これまた流麗でしなやか。
 曲はメロディアスなんだけども、どこか不思議系。
 かといってシリアスではなく、暗くもありません。
 中には妙にプログレッシブロックっぽかったり、フォークロックっぽかったり、いろんな要素が入り混じります。
 ロック世代だったり、デジタル世代だったりするゆえの音使い、音作りなのかな。
 結果、全体では浮遊感が強く軽快で、さりげない印象の音楽。
 これが心地いいし、新しい。



posted by H.A.

【Disc Review】“Arborescence” (2011) Aaron Parks

“Arborescence” (2011) Aaron Parks
Aaron Parks (Piano)

Arborescence
Aaron Parks
Ecm Records
アーロンパークス

 ”Invisible Cinema” (2008)がカッコよかったコンテンポラリージャズ系ピアニスト、筆頭株のひとり。
 米国人?なのでしょうが、クラシックやヨーロッパの香りも漂っていて、柔らかな音で疾走感のある展開が得意そうな新しいタイプ。
 そんな中でのECMへの移籍。
 これは期待度120%。
 さて、一曲目、漂うようなバラード。
 Asleep in the Forestのタイトル通りに、美しくも怪しい不思議で静謐な演奏からスタート。
 これはキタかなあ、と思いつつ聞いていると、あれれ、そのまま盛り上がらずに終わってしまいます。
 まあ、始めはこんな感じかなあと思いつつ二曲目。
 これも美しく静かな流れで思索的に始まり、段々と盛り上がっていきます。
 タイトルはToward Awakening。
 その通りのイメージ。
 さて、来るかな、と思っていると音量を落とし終わります。
 以降も似た印象。
 全て即興のようですが、いずれも美しい曲、美しいピアノ。
 まとまりもよい。
 でも盛り上がらない。
 うーん。
 ”Invisible Cinema”のような疾走感や、さりげない昂揚感を期待してはいけなかったのかな。
 ま、先入観や願望はさておき、落ち着いたピアノが聞きたいときにはピッタリの好アルバムであります。




posted by H.A.
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