吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2014年08月

【コンテンポラリーな日々】No.1~悦楽と絶望のジャズライフ~


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実は私、なにを隠そう廃墟マニアなのです。
by S.I.



 「四十にして惑わず」との格言がありますが、私は50才代後半になり、混迷の日々送ることになりました。と云っても、リストラされたわけではありません。あくまで趣味の分野ではあるのですが、それなりに深刻な問題です。

 「五十にして天命を知る」どころか、ますます迷宮の迷い道の路上で、途方にくれている日々です。高校生の頃からジャズを聴き始めました。私の世代では、廻りはカーペンターズやらレッドツエッペリン、むろんビートルズやらが流行ってましたね。つまりは欧米のポップカルチャーが怒涛の勢いで押し寄せていた頃でしょう。そういえば日本のフォーク・ソングもありました。

 孤高の道を歩むつもりもなかったけど、なぜか私の胸にはもっともモダン・ジャズが響いたのです。ピアノも少しかじっていた私にとってのアイドルは、レッド・ガーランドやウイントン・ケリー、それからビル・エバンスやジョン・ルイス。ですからモダン時代の洗礼を受けと云っていいのでしょう。

 あれから40年以上、私はモダンジャズ・ファンでした。むろん70年代あたりからチック・コリアやH.ハンコック、それからキース・ジャレットとか当時新主流派なんて呼ばれる新しい感覚のジャズプレイヤーが続々と登場したのも良く知ってますし、フュージョンとかアシッド・ジャズなんてものが出てきたのも認識はしていました。フリージャズの存在も知っていたのは云うまでもありません。

 ただ、私はあまりそちら側に強い興味を感じなかった、というか意識的に避けてきたのかもしれません。あくまで自分はモダンジャズのファンであり、それこそがジャズ・ファンとしての王道である、なんて信じ込みたかったのでしょう。

 ですが、その信念らしき思い込みがもろくも崩れたのは、ほんの2年ほど前のこと。それはある店との出会いがきっかけでした。

 Foxholeという名のJazzのお店が吉祥寺にできたのです。不運(?)にも、私はこのお店にふらりと入りました。中に入ると、私にとってはなじみの無いサウンドが鳴り響いていました。およそ私の知るジャズとは縁遠いと思われる音楽、それはどうやらコンテンポラリー・ジャズと呼ぶらしい。おそらく私にとってお気に入りの店にはならないだろうと思っていたこのFoxholeになぜか時々足を運ぶようになりました。それはマスターの気さくな人柄に惹かれたのかもしれませんが、そのうち大きなスピーカーから流れてくる異質なサウンドが、徐々に自然と耳から入り胸に響くようになってきたのです。

 そのうち、Foxholeに集まる常連客たちと親しくなり、このような類の音楽のファンと初めて交流が生まれたのです。ほとんどは私より若い人たちで、中には私の息子と言ってもよいくらいの若者たちからコンテンポラリー・ジャズの教えを請うことになり、お勧めのアルバムも続々と入手しました。

 不思議な出会いではあったかもしれませんが、私のジャズ・ライフは大いなる混迷の日々を迎えることになったのです。それは、これまで気がつかなかった美を知った悦楽と、信念がもろくも崩れた絶望。

 ですが、そんな人たちとの出会いこそが、このブログをはじめるきっかけでもあったのです。モダンジャズ・ファンのまま死んで行くべきだったのかもしれませんが、実は本当は私がずっとずっと以前から心の底で求めていたのはこんな音だったのかもしれないと、思えるようになったのです。

 いささか遅きに失したかもしれませんが、私の悦楽と絶望のコンテンポラリージャズ・ライフが始まったのです。モダンジャズではあり得ないOUT OF RULEのサウンドに、なぜこれほど美しさを感じるのか、その理由を探求する旅はまだ幕を開けたばかりなのです。

 それは人間の意識の奥底に潜む不可思議な魍魎を紐解いて行くいばらの道なのかもしれません。


 
"Your Eyes" from ALBUM“CelestialCircle” (2010)
MarilynMazur(percussion) John Taylor (piano) Anders Jormin (bass) Josefine Cronholm (voice)

si50posted by S.I. 

【Disc Review】“Triz” (2012) André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santos

“Triz” (2012) André Mehmari, Chico Pinheiro, Sérgio Santos
André Mehmari(Piano, vocal, etc.) Chico Pinheiro (Guitar, vocal) Sérgio Santos (Guitar, vocal)
Gabriele Mirabassi (Clarinet) Neymar Dias (bass) Edu Ribeiro (drums) Guello (percussion)


Triz
Andre Mehmari
アンドレ メマ
シコ ピニェイロ
セルジオ サントス

 ブラジル人ミュージシャンによる優雅な音楽。
 Jazz、Bossa、Folklore、Popsが混ざったような、ジャンル分けしがたい素敵な音楽。
 ブラジル・ミナス地方音楽にジャズが混ざった感じが強いのかな?
 Tonihno HortaMilton Nascimentoあたりに雰囲気は近いのだけども、もっと現代的だったり、逆にもっと素朴だったり。
 冒頭、ピアノとガットギターの緩やかなリズムに、クラリネットが絡みつつ、ボーカル、さらには爽やかなガットギターのソロ、クラシック~ヨーロッパジャズ的なピアノが続きます。
 2、3曲目はブラジル的。
 少しアップテンポなリズムの上に、スキャット、クリアトーンのエレキギター、ガットギター、キラキラとしたピアノ、さらにはバンドネオンなどがフィーチャーされつつ、心地よいやわらかな音が展開されていきます。
 曲ごとに楽器の使い方が少しずつ異なるため、一曲一曲の色合いは微妙に違う印象なのですが、優美さやわらかさは共通。
 ソロスペースが小さく、アンサンブルが中心、大向こう受けしそうな派手なアドリブは少ないのですが、要所で入るオブリガードが心地よく、短くまとめられたソロも秀逸。
 そんな演奏が揃っています。
 André Mehmariは知る人ぞ知るピアニスト。
 クラシックの香り、何枚か出ているリーダー作も素晴らしい出来栄え。
 ジャズ、ブラジル、クラシックの配合が絶妙で新鮮。
 Chico Pinheiroのギター、Pat MethenyTonihno Hortaを感じる部分はありますが、よりストレートなジャズな感じ、かつ、より鋭い。
 エレキギター、ガットギターともに音がキレイで、小さなスペースながら、ほどよい音数でスリリングなソロを聞かせてくれます。
 この人、リーダー作を聞くとちょっとビックリのテクニシャン。
 ボーカル入りのMPBが中心ですが、どのアルバムもカッコいい。
 Sérgio Santosは余裕たっぷりの端正で柔らかな歌声。
 全体の雰囲気は、少し曇っているのだけれども暖かな日曜の午後。
 細かいことはさておいて、現代最高のメンバーが繰り広げる音で、南米大陸のおおらかでやわらかな空気感を楽しみましょう。
 (行ったことはないのですが。。。)




posted by H.A.

【Disc Review】“Flower Clouds” (2013) Naoko Sakata Trio

“Flower Clouds” (2013)
Naoko Sakata (piano) Trio
 
FLOWER CLOUDS
ナオコ サカタ トリオ
澤野工房


 最近気になっているピアノニスト。
 澤野工房さんからですが、日本人、ヨーロッパ系、不思議系、アグレッシブ系。
 ヨーロッパ的ジャズ大好き人間としては、やっとそんな音楽を演奏してくれる日本人が出てきたと、大きな期待。
 情報が無ければ日本人とは思えないぐらいヨーロッパ的な音。
 クラッシックの香りがする美しく深い音使いですが、誰に近いのかと考えてみても思いつかない。
 滑らかにかつ急激に上方向にスライドしていくロングフレーズ、さらにその連発が特徴かな?アグレッシブでエキサイティングなのだけども、キレイなメロディを文字通り綴っていくような音使い、その他この人ならではのたくさんの引き出しがありそう。
 フリージャズ的な音楽への指向が強いのかもしれませんが、そんな曲でも、美しいピアノの音と、適度に入ってくるわりやすいフレーズによって難解さが希釈され、ほどよいバランス。
 いずれにしても 魅力的かつ個性的なピアニストであることは間違いありません。
 さて、これからどんな方向に伸びていくのか楽しみなピアニスト。




posted by H.A.

【Disc Review】 “Driftwood” (2014) Wolfgang Muthspiel

"Driftwood” (2014) Wolfgang Muthspiel
Wolfgang Muthspiel(Guitar)
Larry Grenadier(Bass) Brian Blade(Drum)

Driftwood
Wolfgang Muthspiel
Ecm Records
2014-06-24
ウォルフガング ムースピール

 人気ギタリストWolfgang Muthspielがこのメンツ、さらにECMレーベルであればファンならずとも飛びつくところ。
 この人、レーベル共に、妖しさ怪しさや一筋縄ではいかない感が魅力。
 穏やかな演奏から過激な演奏まで幅のある人なので、どうなるかは予想不可能。
 一曲目、いかにもECM的な色合いで、静かなフリーテンポの絡み合いで始まり、艶のある音色のギターがリードを始めたか、と思いきや、そのままあまり盛り上がらないで終了します。
 二曲目はアコースティックギターで明確なテーマのあるコンテンポラリー曲。
 いい感じのギターソロが展開され、そろそろまとまるかなと思っていると、テーマに戻ってベースソロに移行、これも悪くないのだけども、そろそろ盛り上がるかなと思っていると終了。
 三曲目、これもアコースティックギター。
 哀愁系のテーマをベースが奏で始め、ギターが追随。
 おっ、来るかな、と思っていると気が付くと終了。
 などなど、同じような印象の展開が続きます。
 いい感じで始まり、いい曲もあるし、難解な展開は少なく、個々のソロも悪くないのだけれども、強い押しや、明確な盛り上がり、起承転結感には乏しい感じ。
 それを深くて奥ゆかしいと捉えれば、その通り。
 穏やかなモードのWolfgang Muthspiel。
 確かに近年の作品はこんな感じでしたかね。
 さて次作はどうなるか、これまた予測不可能。 




posted by H.A.
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