吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2014年04月

【Disc Review】 “Tales of Cyparis” (2013) Grégory Privat

“Tales of Cyparis”  (2013) Grégory Privat
Grégory Privat (Piano, Fender Rhodes, Wurlitzer)
Manu Codjia (Guitar) Jiri Slavik (Double Bass) Arnaud Dolmen (Ka) Sonny Troupé (Drums, Ka) Adriano Tenorio (Percussions)

Tales of Cyparis
Privat
Plus Loin Music
2013-09-24





 フランス領マルティニーク出身の若手ピアニストの爽やかなコンテンポラリージャズ。
 何やらBill Evansっぽいpianoのイントロから始まるこのアルバム。
 DrumではなくCajón(箱型パーカッションですね)とBaseが加わり、なるほど、カリブっぽいムードが漂い始めます。
 編成はピアノトリオをベースに、ギターやボーカルなどが彩を添える今風なジャズ。
 アルバム出だしの質感はKeith Jarrettの“Treasure Island”から毒気を抜いて軽やかに、近代的にした感じかな?
 中にはStevie Wonder的なボーカル曲が何曲かあったり、少々ロックっぽいギターが入ったり。
 ジャズやらワールドやらソウルやら、もろもろのテイストが混ざった佳曲揃い。
 リーダーのピアノ、ヨーロッパの雰囲気が漂い上品かつしなやか、軽快でほどよい疾走感。
 要所で決まる早いパッセージがカッコいい。
 しかもヨーロッパ系にありがちな暗さ深刻さは皆無、明るい質感。
 少し前ならZsolt Kaltenecker、現代ならRobert Glasperあたりにも通じる感じでしょうか。
 純粋な4ビートはなく、またラテンっぽくも無いのですが、全編ジャズの香り、ときおりクラーベ(南米系特有のリズムパターン)が薄ーく鳴っているように感じられる(気のせい?)のも心地いい。
 全編のんびりしていて暖かそうだけど、ほどよく都会的、しかも気品あふれる音楽。
 カリブのマルティニークってこんな感じの所なのかな。だったら行ってみたいな。
 なお、ひとつ前のアルバム“Ki Koté”(2011)もベース、カフォンのトリオ+ボイスで同質、ものすごく心地よく、カッコいいです。



posted by H.A.

【Disc Review】 “Vaghissimo Ritratto” (2007) Gianluigi Trovesi

“Vaghissimo Ritratto” (2007) Gianluigi Trovesi
Gianluigi Trovesi (alto clarinet)
Umberto Petrin (Piano) Fulvio Maras, Fulvio Marras (Electronics, Percussion)

Vaghissimo Ritratto (Ocrd)
Gianluigi Trovesi
Ecm Records
2007-04-24
ジャンルイージ・トロヴェシ 



 知る人ぞ知る(そうでもない?)イタリアのサックス、クラリネット奏者。
 ピアノとパーカッションを従えたトリオで、ジャズともクラシックともポップスともつかない、静かで優しく、美しい音楽を奏でてくれます。
 冒頭曲、天から何かが下りてくるようなキラキラとしたピアノ、シムノペティNo.1的なコードの上を牧歌的なアルトクラリネットが漂います。
 全編この質感。
 ジャズ的なスイング感、躍動感は薄く、また、激甘な美曲があるわけではありませんが、ゆったりとした静謐さの中に突然少しだけ甘いメロディ、あるいはスピード感のあるフレーズが次々と現れる展開。
 いかにもヨーロッパ~ECM的ですが、全曲明確なメロディ、リズム。
 このレーベルにありがちな難解さや陰鬱さはありません。
 雰囲気はさながら予定を入れていない晴れた日曜日の朝。
 心地よい落ち着いた一日が過ごせそうです。
 また、全体を通じて好サポートのピアニストUmberto Petrin、さらりとした音、控えめな演奏ながら、只者ではない感が漂います。
 とても穏やかでさりげないようで、とても素敵な音楽。




posted by H.A.

【Disc Review】 “Variazioni su tema” (2011) Rita Marcotulli

“Variazioni su tema” (2011) Rita Marcotulli
Rita Marcotulli(piano)
Javier Girotto(sax) Luciano Biondini(Accordion)

リタ マルコチュリ

 イタリア人女性ピアニスト、Rita Marcotulliの優しい音楽。
 この人、ジャズの客演だとアグレッシブで只者では無い感が漂うピアノを弾くのですが、何故かリーダー作では落ち着いた演奏。
 このアルバムでもサックス、アコーディオンのトリオで牧歌的で優しげな音楽。
 いかにもイタリアっぽく小粋な感じであくまでゆったりと。
 映画のサントラのようでもありますが、あくまで恋愛もの系で、クライム系ではありません。
 数曲だけでももう少し派手にピアノを弾いて、アグレッシブなジャズにしてほしい感が無きにしもあらずですが、こんな平和な音もいいでしょう。
 晴れて暖かい休日のBGMにピッタリ。




posted by H.A.

【Disc Review】“Manu Katché” (2012) Manu Katche

“Manu Katché” (2012) Manu Katché
Manu Katche (Drums)
Jim Watson (Piano, Organ) Tore Brunborg (Tenor, Soprano Sax) Nils Petter Molvær (Trumpet)

Manu Katche
Manu Katche
Ecm Records
2012-10-30
マヌ カッチェ

 Manu Katche、ECM第4弾。
 本作もまたクールなManu Katche World。
 いつもの乾いた音のスネアと宙を舞うシンバル。
 静かに進む定常なビート、でも決してデジタルではない人間臭いグルーブ。
 クールでさりげない現代的で穏やかな音空間、全体を覆う薄くて透明なベールのような寂寥感。
 本作は少々インプロビゼーションスペースも広め、さらにオルガンの導入で少々アーシーな色合いも。
 その分、ジャズ的な色合いが強くなっているかな。
 オーソドックスな色合いのサックス、エフェクターを絡めてスペーシーな空間を作るトランペット、控えめで抑制されたピアノ、オルガン。
 どれも穏やかで優しい。
 ベースを流れる寂寥感は消えないけども、仄明るく、仄温かく、優しい音。
 とても素敵な音空間。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Third Round” (2010) Manu Katche

“Third Round” (2010) Manu Katche
Manu Katché (drums)
Pino Palladino (bass) Jason Rebello (piano) Tore Brunborg (saxohones) Jacob Young (guitars) Kami Lyle (voice, trumpet)

Third Round
Universal Music LLC
2010-03-24
マヌ カッチェ

 ドラマーManu Katche。ECMでの3枚目。
 本作は、少々明るめ、ポップにも聞こえるManu Katche。
 もともとロック、ポップス畑が主戦場の人なのでしょう。
 8ビート中心のリズム、控えめなアドリブ、それら含めて今までのジャズっぽくない感じは前作と同様。
 乾いた音のスネアと、宙を舞う静かなシンバルが心地よく響く音空間。
 いかにもECMっぽい綺麗なピアノが出てきたり、サックスが前面に出るとジャズっぽくもなったりするのですが、気が付くとポップス~スムースジャズの香りが濃い、しかし、あくまでさりげなく、決してうるさくはならない独特の色彩に。
 ボーカルナンバーもシンプルなビートに乗った、不思議系の女性ボイスが映えるフォーキーな佳曲・・・ 
 と書いてしまうとジャズファンからは遠い感じもしてしまうのですが、アンサンブル、演奏ともに一級品、安っぽさは微塵もなし。
 しかも何故か全体のムードはジャズ。
 但し、1960年代のジャズの熱さや1970年代以降のヨーロピアンジャズの深刻さ、小難しさもなし。
 ただただ自然ながらキャッチーなメロディと、肩に力が入らない自然な演奏。
 こんな感じのテイストが今風の、あるいはこれからのジャズの主流のひとつになるのかな?
 明るく爽やか、でも全体を通じた少々の翳りが深さを感じさせる音。 





posted by H.A.

【Disc Review】“Playground” (2007) Manu Katché

“Playground” (2007) Manu Katché
Manu Katche (drum)
Mathias Eick (trumpet) Trygve Seim (tenor, soprano sax) Marcin Wasilewski (piano) Slawomir Kurkiewicz (bass) David Torn (guitar)

Playground (Ocrd)
Manu Katche
Ecm Records
2007-09-25
マヌ カッチェ

 若手ドラマー、Manu Katché、ECM第二作。
 前作のベテラン・オールスター・ホーン陣に代わって、同世代のメンバー。
 寂寥感が強めの音。
 あまり深刻にならないムードは前作同様、サラリとした寂寥感。
 決して熱くなることはなく淡々と進む演奏。強烈なビートもなければ、派手なインプロビゼーションも無い。
 淡々と刻まれる8ビート、乾いたスネアと静かに宙を舞うシンバルの音。静かに響くピアノ。力みのないホーンのアンサンブル。
 このクールさ、さり気なさがかえって凄みを感じさせる音。
 4曲目ぐらいから少し音量は上がり、ポップさも加わりますが、それでもクールな質感。
 それにしても寂寥感の漂ういい曲ばかり、奇をてらわない、個々の楽器の音が生きる上質なアレンジ。
 決して広くはないインプロビゼーションスペースでは、コンパクトながらツボを押さえた素晴らしい演奏。
 これまた、これ見よがしで派手な感じではないことが凄みに。
 これ、凄いアルバム、宝物を見つけたのかもしれない。




posted by H.A.

【Disc Review】“Neighbourhood” (2006) Manu Katche

“Neighbourhood” (2006) Manu Katche
Manu Katche (drum)
Marcin Wasilewski (piano) Slawomir Kurkiewicz (bass)
Jan Garbarek(saxophones) Tomasz Stanko(trumpet) 

ネイバーフッド
マヌ カッチェ






 近年のECMで登場回数が多いドラマー、Manu Katcheのアルバム。
 ロック畑の人なのでしょうか、4beatやフリー的な展開は少なく、8や16beat、変拍子が中心、全体を通じてECM的な暗さや切迫感は希薄。
 明るくてポップな印象のコンテンポラリージャズ。
 メンバーはさしずめECMオールスターズ。
 曲者のベテラン陣、Jan Garbarekはいつもの切迫感が影を潜め、Tomasz Stankoは緊張感漂うフレーズを連発するものの、Manu Katcheの明るいビートに希釈される、といった展開。
 Marcin Wasilewskiのピアノも軽やか。
 軽快で明るい今風のグルーヴ感の若手リズム陣と、深刻で怪しいベテランフロント陣。
 いいバランスです。
 曲も軽快なものが多いけど、演奏のテンションが高いのでこれまたいいバランス。
 この明るさは、冷戦後、少し遅れて新しい時代への切り替わりの標し、というと大げさかな?
 21世紀の若手リズム隊の現代のグルーヴ、対、20世紀からのジャズの闘士。
 結果としては、前者の中にすっかり取り込まれた後者。
 軽快だけどほどほどしっとり、クールでポップなコンテンポラリージャズ。
 もちろんとても上質です。




posted by H.A.
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