吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

2014年02月

【Disc Review】“January” (2008) Marcin Wasilewski

“January” (2008) Marcin Wasilewski
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (bass) Michal Miskiewicz (drums)

January (Ocrd)
Marcin Wasilewski
Ecm Records
2008-05-06
マルチン・ボシレフスキ

 ポーランドの人気ピアニストMarcin Wasilewskiのピアノトリオ。
 シンプルアコースティックトリオ名義で人気を得た後でのECMレーベルへの移動。
 親分Tomasz Stankoのアルバム、直近では“Lontano”(2006)への参加でいい演奏を展開していましたので期待の一枚。
 なかなか期待通りに出来てくるアルバムは多くないのですが、これは大当たり。
 ECMレーベルの質感とこのトリオの現代的な質感が絶妙なバランスでマッチングした名盤だと思います。
 冒頭曲、親分StankoがECMでも何度か吹き込んだシンプルな哀愁曲。
 ECMによく聞かれるゆったりとしたルバートでのバラードですがこれが絶品。
 厳かに始まり、漂うようなリズム、何度か止まりそうなほどに減速したテンポを何度も立て直しながら、美しくももの悲しいメロディを綿々と奏でていきます。
 決して長い演奏ではではありませんが、ドラマチック。
 数分間の間にさまざまな映像が頭の中に浮かんでは消えていきます。
 没頭して聞いていると、悲しいメロディに胸が締めつけられ、リズムに合わせて心臓が止まるのではないかと思うほど。
 さまざまなルバートでのバラードを聞いてきましたがこれが一番。
 さらに2曲目。
 Gary Peacockの“Tales Of Another” (1977) でKeith Jarrettの名演がある"Vignette"。
 オリジナルは緊張が極めて高い、美しくも激しい演奏でしたが、このバージョンはむしろ軽やか。
 緊張感と美しさはそのままに、現代的な軽さが加わることで新しい質感に進化しているようにも思います。
 これだけでも満足なのですが、止まりません。
 3曲目はあのモリコーネのCinema Paradiso。
 元々オリジナルが漂うようなゆったりとした演奏でしたが、そのムードそのままに、思索的なイントロから、哀感あふれるメロディを奏でていきます。
 その後もPrince、親分StankoCarla Bleyなどのカバー曲にオリジナルを加えつつ、中だるみすることなく最後まで素晴らしい演奏が続きます。
 Marcin Wasilewskiのピアノ、さまざまな聞き方、評価があるのだと思いますが、私は「しなやかさ」「柔らかさ」、いい意味での「軽さ」に注目。
 Robert Glasperあたりとも質感は近く、現代的なジャズピアノの一つの特徴だと思っています。
 Keith JarrettSteve KuhnBobo StensonなどECM系のベテランスタイリストとも一線を画すポイント。
 ともすれば、彼らに比べて緊張感が足りない、シビアさ、アグレッシブさに欠ける、といった向きもあるのかもしれませんが、そんなクールネスが現代ジャズの一つの特徴。
 私的現代的ジャズピアノトリオの代表作の一つ。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Heavy soul” (1961) Ike Quebec

"Heavy soul” (1961) Ike Quebec
Ike Quebec(Tenor Sax)
Freddie Roach (organ) Milt Hinton (bass) Al Harewood (drums)

Heavy Soul
Ike Quebec
EMI Europe Generic
アイク ケベック

 名門ブルーノートからソウルフルテナーIke Quebec。
 このアルバムではオルガントリオをバックに、ちょっとひしゃげたような音色で、サブトーンを効果的に交えながら、メロディアスなフレーズを展開。
 スイング時代からのベテランらしく、少し古い雰囲気を醸し出しながらも、モダンジャズとして不自然でない演奏。
 Coleman HawkinsやBen Websterの場合、モダンジャズをやっても、何となくスイング時代を感じてしまいますが、この人の場合はモダンジャズ。
 いそうでなかなかいないタイプのミュージシャンのように思います。
 曲はオリジナル曲とスタンダードを半々。
 どの曲もカッコいいメロディとリフ、アレンジも決まっています。
 全編オルガンが入ったJazz独特のグルーブ感満載。
 聞いていると1960年代のハーレム辺りに連れて行ってくれそう。
 アップテンポの曲もいいですが、数曲入るバラードも絶品。
 スペーシーなオルガンの音が空間全体を包み込み、とろけるようなサブトーンたっぷりのテナーを聞いていると、全身の力がふにゃ~と抜けていきそう。
 渋いです。
 カッコいいです。




posted by H.A.

【Disc Review】 “Lovers” (1988) David Murray

“Lovers” (1988) David Murray
David Murray(tenor sax)
Dave Burrell (piano) Fred Hopkins (bass) Ralph Peterson Jr. (drums)

デビッド マレイ

 ちょっと過激だけど普通のジャズやってもものすごくカッコいいテナーサックスDavid Murray。
 カルテットでのバラード集。
 この人のテナーは黒い。
 真っ黒け。
 それもつやつやした黒。
 それでバラード集など演られるとたまりません。
 ゆったりとした美しいバラードではじまるこの盤、最初のテナーの一吹きで、おっとこれはすごいかもと思わせます。
 一曲目、美しい演奏が続くこと数分、気がつくとフリーっぽい激しい演奏に展開、あれれ、と思うのはつかの間、最後は元の落ち着いたテーマに戻ります。
 この人、どんな曲でも同様の展開が多いのですが、この盤のゆったりとしたバラード中心の楽曲でも、徹底的にそれをやってくれています。
 一味違う辛口なバラードはMurrayさんならでは。
 曲は”In a Sentimental Mood”を除いてオリジナルですが、どの曲もメロディアス。
 ピアノはDave Burrel、フリージャズが本分なのでしょうが、ここでは抑え目にしっかりとサポート。
 ベースのFred Hopkins、ドラムのEd Blackwellも同様。
 どの曲もいいのですが、特に冒頭の故Jimmy Garrisonに捧げたDave Burrelの”Teardrops For Jimmy”はホントに涙に出そうになる名曲・名演。
 穏やかなサックスと美しいことこの上ないピアノ、そして激情・・・
 さらに、最後の”Nalungo”は懐かしの火曜サスペンス劇場?の世界。
 沈痛なテーマ、アルコによる過激なベースソロの後に美しいピアノ、さらにテンポを上げてハードボイルドなサックスソロに繋がっていきます。
 過剰なまでにドラマチック。




posted by H.A.

Members Vol.2

Agent R.Y.
 30代。システムエンジニア。
 年間250本を超えるライブに参加するライブマニア。
 整い過ぎたもの、予定調和より、ハプニング、偶発性を好む。
 フリージャズでもノイズでもなんでもこい。

 My Favorites
 カフカ鼾、Nik Bartsch、Vassilis Tsabropoulos




Agent N.N.
  Blues、BluesyなRockを好むWebプランナー。
  映画、音楽、文学等々、大衆作からアバンギャルドまで全方位。
  近々、中央線沿線にBluesy漢方Barを開店予定。たぶん。

 My Favorites
 Bob Dylan、Niel Young、Rolling Stones





Agent M.A.
 ベテランリーマン兼ギタリスト。
 プログレッシブロックからケニー・バレル、おまけに、ブラジル音楽、さらにはデレク・ベイリーまで。
 ビンテージ・ギブソンを愛するオヤジギタリスト。





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