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廃墟になることを想定して設計する建築家がいるとすれば、彼は奇人ではなく、歴史家である。
by S.I.


 
 ある大学のジャズ研の部員であるベース弾きの学生さんから聞いた話だけど、彼の属するジャズ研の部員は約60名ほど在籍があるとのこと。その数にちょっと驚いたけど、さらに色々聞くと、どこの大学でもわりとジャズ研は人気らしく、部員数も豊富らしい。

 ジャズファンの私としては、若い連中もジャズ好きが少なくないんだな、と嬉しいようなホッとしたような気分になる。少なくとも今のところは、必ずしも滅び行く音楽ではなさそうだ。

 ただ、さらにその実態を聞くと、これが面白い。50名以上の部員は、それぞれの「派」に分かれているらしい。

 例えばスウィングとかモダンばかりやっているグループ。これはいわばオールドジャズ派かな。また、ビッグバンド中心の連中もいるらしい。さらにエレクトリック楽器でもってフュージョンっぽい音楽を演っているグループもあるとのこと。さらにパソコンとかDTMとか駆使してクラブというかヒップホップというかハウスというか(良く分からないけど)、そんな最先端っぽいサウンドに取り組んでいる一派もいるらしい。

 考えてみると、私の世代またはそれ以上の人間は、だいたいジャズ史の時系列とともに聴いてきた。はじめはスウインやバップ。続いてもっと鋭い感じのモード・ジャズ。時代とともにジャズは理論的にはけっこう複雑になって、やがてフュージョンなんかが台頭してくる。その時々で時代の変遷のような感じでジャズを捉え、聴いてきた。

 だけど、現在の若者たちは、すでに100年間近いジャズ史と一度にまともに直面することになる。その情報を得る様々なツールもある。その中から、どの時代のジャズをチョイスするか、それは我々の世代とは決定的に違う。

 考えてみれば、スウィングやモダンのようなちょっと古いタイプのジャズも若い連中にとっては、もしかしたら、最近流行っている最先端の音より、新鮮で「新しい」のかもしれない。彼らは決して時系列でジャズと接してはいないはずだ。どこからでも聴き始めることも出る。


 我々は、初めてラジカセなるパーソナルな再生機を手に入れた最初の世代かもしれないが、今は比べ物にならないほどたくさんのツールがある。マイルスやコルトレーンなどの姿も演奏も、YOU-TUBEで即座に観て、聴くことができるわけだ。しかもスマホでいつでもどこでも体感できる。

 少々大げさかもしれないけど、我々はタイムマシンというか、タイムリープ・マシンを手に入れたも同然かもしれない。今から100年後、300年後の人も、ビル・エバンスやキース・ジャレットの姿や演奏も体感できる。

 現代で云えば、バッハやモーツアルトの演奏も聴くことが出来るに等しい。これって、まさに革新的な出来事だと思うのです。

 ところで、例のベーシストの学生さんから、文化祭の時のジャズ研の映像を見せてもらったことがある。ますはバンジョーなんかも入ってディキシーとかスウイング。いい感じだ。次にビッグバンド。カウント・ベイシーの曲だけどツボはおさえてる。次に明らかにマイルスとコルレーンを意識した感じのクィンテット。微笑ましい。次はフェンダーのエレピとエフェクトかけたギターとかのフュージョンぽいサウンド。ちょっとぎこちないけど、悪くない。その次はパソコンでもってループしたリズムにシンセっぽい音をかぶせ、さらに生楽器でインプロビゼーション。スタイリッシュさは出てる感じだ。

 私はわずか70分ほどの映像と演奏を聴きながら、まるでタイムマシンに乗って100年近い音楽旅行をした気分だった。

 これを演奏しているのはみんな同時代の若者たち。

 もしかしたら、彼らの演奏の総称を「コンテンポラリー・ジャズ」と呼ぶのかもしれない・・・?。