吉祥寺JazzSyndicate

 吉祥寺ジャズシンジケートは、東京、吉祥寺の某Barに集まるJazzファンのゆるーいコミュニティです。  コンテンポラリーJazzを中心に、音楽、アート、アニメ、カフェ、バー、面白グッズ、などなど、わがままに、気まぐれに、無責任に発信します。

【Disc Review】“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

“Trickster Orchestra” (2021) Cymin Samawatie, Ketan Bhatti

Cymin Samawatie (voice) Ketan Bhatti (drums)
Trickster Orchestra:
Mahan Mirarab (guitar, oud) Niko Meinhold (piano) Mohamad Fityan (nay, kawala) Sabrina Ma, Taiko Saito (marimba, vibraphone) Joss Turnbull (perc, electronics) Ralf Schwarz (bass) Susanne Fröhlich (recorders, paetzold recorder) Tilmann Dehnhard (flutes) Mona Matbou Riahi (clarinet) Wu Wei (sheng) Milian Vogel (bass clarinet, electronics) Florian Juncker (trombone) Naoko Kikuchi (koto) Bassem Alkhouri (kanun) Biliana Voutchkova (violin) Martin Stegner (viola) Anil Eraslan (cello) Rabih Lahoud, Sveta Kundish (voice)

Trickster Orchestra
Cymin Samawatie, Ketan Bhatti
ECM
2021-04-23


 中近東エスニックコンテンポラリージャズコンボCyminologyのボーカリストCymin Samawatie、インドルーツのドラマーKetan Bhattiの双頭リーダー作。
 オーケストラと銘打った大編成ですが、管弦楽団でもビッグバンドでもない、世界各地の楽器が入り混じるノンジャンル・無国籍楽団。
 Cyminologyでは、歌は中近東エスニック、ボーカルが引くとジャズな感じでしたが、本作は全く質感が異なります。
 ボーカル入りは数曲のみ、ジャズ度なしのクラシックベースな感じ、でもクラシックっぽくはない、エスニック感たっぷり、でも西欧色が強いような、不思議なバランス。
 淡く、静かで、穏やかで・・・ってな近年のECMレコードな感じでもありません。
 静かに妖しく始まり、徐々に強くなる音、次々と景色は変わっていきます。
 西欧系、バイオリン系の楽器が目立つものの、それらとマリンバ、笙、箏などが交錯する展開。
 メロディは中近東でもインドでもアジアでも、もちろんヨーロッパでもない、それらの色合いが現れては消えていく不思議系。
 時代感の希薄さ、ダークで緊張感の高い空気感、妖しくときおり激しくなる展開は、レトロなサスペンス映画のサントラっぽい感じがしないでもない・・・そんな色合い。
 混沌、プログレッシブロックな強いビート、敬虔で清廉なコーラスなども交えながら、目まぐるしく形を変えていく音の流れ。
 変幻自在、予測不可能、摩訶不思議な迷宮サウンド。
 前衛的で非日常的ですが、計算し尽くされたアンサンブルなのでしょう。
 気難し気でも、実験色が強烈なわけでもない、これまた摩訶不思議なバランス。
 ジャズでもロックでもクラシックでも伝統音楽でもない、中近東なのかインドなのかアジアなのかアフリカなのか、やはりヨーロッパなのか、また、いつの時代かもわからない、それらが混然一体となったフュージョンミュージック。
 終始緊張感に覆われた深刻な表情の物語が最後に行きつく先は、ハッピーエンドの大団円か、それとも・・・
 さて、何が見えるか、どう感じるかは聞く人次第。


 

posted by H.A.

【Disc Review】“Bayou” (2018) Thomas Strønen

“Bayou” (2018) Thomas Strønen

Thomas Strønen (Drums, Percussion)
Ayumi Tanaka (Piano) Marthe Lea (Clarinet, Vocals, Percussion)

Bayou
Thomas Strønen
ECM
2021-04-09


 ノルウェーのドラマーThomas Strønen、ピアノ、クラリネットとの変則トリオ。
 ピアノは日本人女性、クラリネットも女性。
 静かで自由な時間、迷宮系。
 美しいピアノと妖しいクラリネット、ときおり聞こえる女声の歌。
 それらに合わせるように鳴る静かな打音、擦過音。
 フリーなインプロビゼーションが中心でしょうか。
 ここまでの諸作では何曲かはあったビートの効いたジャズな演奏はありません。
 派手なインプロビゼーションの場面もありません。
 ゆったりとした流れ、たっぷりの余白。
 誰かの発した音に合わせるように形を変えていくバンド。
 美しい音とメロディアスなフレーズたち。
 が、長く一定の形を保つことなく、漂い、消えていく音。
 少し音量を変えると、あるいは聞く位置を変えるだけでも形が変わってしまいそうな繊細さ。
 そんな音の流れが最初から最後まで続きます。
 予測不可能、ジャズやクラシックなわかりやすさはなく、聞き慣れた音ではありません。
 終始緊張感に包まれ、明るくもありません。
 それでも心地よいのは、個々のフレーズがメロディアスだから、そしてどこか懐かしい空気が流れているからでしょうか。
 静かな迷宮。
 儚く繊細な時間。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Wolf Rune” (2019) Sinikka Langeland

“Wolf Rune” (2019) Sinikka Langeland

Sinikka Langeland (Kantele, Vocal)

Wolf Rune
Sinikka Langeland
ECM
2021-04-09


 ノルウェーのボーカル&古楽器カンテレ奏者Sinikka Langeland、ソロ作品。
 “The Magical Forest” (2015)以来、久々のアルバムでしょうか?
 ここまでのECMレコード諸作では、北欧伝統音楽色なのであろうエスニックな色合いをベースに、ジャズなメンバーやら、パイプオルガンやコーラスを交えたクラシカルな作品やら。
 それらはいかにもECMなボーダーレス・ジャンレス・エイジレスフュージョンでしたが、アンサンブル中心。
 結果、カンテレが前面に出る場面が限られていましたが、本作はその高貴で美しい音、全開。
 金属的ながら何の素材の響きなのかわからない、なんとも微妙で美しい音。
 ミュートされない開放弦の残響音の中に鳴る次の音、それらの共鳴。
 それらが織り成す美しい綾。
 終始ゆったりとした音の動き。楽曲は現代のオリジナルなのか、北欧伝統音楽なのか、古楽なのか、クラシックなのかよくわかりません。
 それらが入り混じっているのでしょう。
 フォーキーでとてもメロディアス、前向きな印象ですが、聞き慣れた日常の音ではありません。
 朗々とした声はどこのいつの言葉で何を歌っているのかもわかりません。
 が、エスニックだとかノスタルジックだとかを超えた、幽玄、敬虔、高貴な音、静謐な時間。
 強烈な非日常感の中、上の方で美しい何かが優雅に舞っているような錯覚。
 ありがたい。
 見えてくるのは北欧の原野か、モノトーンな海か、あるいは教会の中の柔らかな光か。
 そんなトリップミュージック。


 

posted by H.A.


【Disc Review】“Entendre” (2020) Nik Bartsch

“Entendre” (2020) Nik Bartsch

Nik Bartsch (Piano)

Entendre
ECM Records
2021-03-19


 スイスのミニマルファンクなジャズピアニストNik Bartsch、ソロピアノ作品。
 ピアノ一台でもやはりミニマルファンクジャズ。
 楽曲もいつものModuleXXシリーズ。
 RoninMobileでの演奏で世に出ている楽曲の再演もありますが、バンドでの演奏とは印象が異なります。
 メンバー間の探り合うような時間が無くなりなり、単刀直入、直球勝負。
 硬質なピアノ、硬質なビート。
 ダークな空気感、妖しいムード。
 強い緊張感を伴いひたすら続くリフレインと現れては消えていく哀しいメロディ。
 一定のパルスを保ちつつ、グラデーションを描きながら徐々に変わっていく景色。
 各曲終盤に向けて徐々に上がっていく音量、テンション。
 そして、内に内に向かっていたエネルギーが一気に外に向けて放たれる瞬間・・・開ける視界・・・
 大筋の流れはバンドでの演奏と変わらないのかもしれませんが、ピアノ一台ゆえの混り気なし、明確な輪郭、シャープでひたすら美しい音。
 ジャズ的なインプロビゼーションの時間がほとんどないのも変わりませんが、バンド全体が絡み合いながらリフを作る諸作品よりもシンプルで、メロディと展開が明確に見えるようにも感じます。
 ビートが強くなってもピアノ独奏ゆえの静かな佇まい。
 静謐で硬質、図らずとも背筋が伸びるような時間。
 妖しく美しい音のリフレインが誘う陶酔感に浸るか、徐々に変わっていく景色を眺めるか、大きな変化の瞬間がもたらすカタルシスを待つか。
 エネルギーが外に向かうオーソドックスなジャズとは違う、内向的で求道的、静かなミニマルジャズ、ってな感じでよろしいかと。

※ソロでのライブ演奏から。
 

posted by H.A.



【Disc Review】“Road to the Sun” (2021) Pat Metheny

“Road to the Sun” (2021) Pat Metheny

Jason Vieaux (Guitar) Los Angeles Guitar Quartet
Pat Metheny (Guitar)

ROAD TO THE SUN
PAT METHENY
ADA/BMG/MODERN RECORDINGS
2021-03-05



 作曲家Pat Metheny、クラシックギターで演奏される組曲二編+α。
 本編の演奏はその筋の名ギタリストたちに委ねています。
 前半は独奏。
 後半はギター4台。
 最後にPat さん本人がArvo Partの楽曲をピカソギターで一曲。
 クラシックには疎いのですが、全編そうなのでしょう。
 アコースティックギター一本の作品も含めてここまでのどの作品とも違う色合い。
 が、いかにもクラシック、ではなく、もちろんPat Metheny的、あるいはフォルクローレ的、南米系な空気感なのは、Patさんのスコアゆえなのでしょう。
 静かに穏やかに流れていく時間。
 どこかで聞いたことのあるメロディ、展開の断片が現れては消えていきます。
 さらに後半、ギターカルテットでの演奏になると、コードストロークも盛り込みつつ、フォーキーな色合い、南米フォルクローレ、スパニッシュ、そしてクラシカルな色合い、それらの交錯。
 かつての作品のどこかの場面を漂わせつつのアコースティックなPat Methenyワールド。
 終盤に向けてテンションを上げていくドラマチックな展開。
 "The Way Up" (2003,2004)、”Secret Story” (1991)、近作“From This Place” (2019) などの組曲(風)は、ドカーンとくる場面含めて強烈にドラマチックでしたが、本作はあくまで穏やかなドラマ。
 そして安堵するかのように静かに本編は幕。
 さらにさながらアンコールのようにピカソギターが奏でる静かな幻想・・・
 もちろんいつもとは色合いが異なります。
 が、静かで穏やか、上品な佇まいと、さりげなく流れるいつものPat Metheny色がとてもいい感じ。
 そんな作曲家Patさんのクラシック(?)ギターミュージック。 


 

posted by H.A.



【Disc Review】"Garden of Expression" (2019) Joe Lovano Trio Tapestry

"Garden of Expression" (2019) Joe Lovano Trio Tapestry

Joe Lovano (Saxophone)
Marilyn Crispell (Piano) Carmen Castaldi (Drums)

Garden of Expression
Lovano, Joe -Trio Tapestry-
Ecm
2021-01-29


 Joe Lovano、ベースレスでの変則トリオ。
 “Seeds Of Change” (2018)に続くTrio Tapestryの二作目。
 前作同様、ベテランスタイリストたちの奏でる幽玄な音。
 ゆったりとした漂うようなテンポ、もの悲しいメロディ。
 零れ落ちてくる、あるいは静かな波のように敷き詰められていくピアノ。
 変幻自在に絡みつくパーカッション。
 その中を舞い上がるサックス。
 ゴリゴリのサックスやガンガン叩きつけられるピアノは、今は昔。
 侘び寂び、あるいは悟りな世界。
 フリーインプロビゼーションではなく、テーマを出して展開するジャズの流儀が中心。
 が、自由なムード。
 定まりそうで定まらない揺れ動くビート。
 寄り添うようにカウンターを当て合う三者、崩れそうで崩れない調性。
 余分な力が入らない枯れた感じ、それでいてハードボイルドなムード。
 それらが醸し出す寂寥感・・・
 前作に比べるとフリーな時間が減り、一定のペースを保ちながら揺れ動く時間が増え、特にピアノが美しい波を作る場面が印象に残ります。
 このトリオとしてのアンサンブルが整理されてきたのかもしれませんし、長さではなくそんな演奏が印象に残る流れなのかもしれません。
 いずれにしても名人芸。
 ”Chapel Song”から始まり、締めは10分を超えて揺蕩い続ける“Zen Like”。
 タイトルのイメージ通り、静寂と幻想、余白の多い時間。
 深い。
 美しい。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Mare Nostrum III” (2016) Paolo Fresu, Richard Galliano, Jan Lundgren

“Mare Nostrum III” (2016) Paolo Fresu, Richard Galliano, Jan Lundgren

Paolo Fresu (trumpet, fluegelhorn) Richard Galliano (accordion, bandoneon, accordina) Jan Lundgren (piano)

MARE NOSTRUM III
FRESU/GALLIANO/LUNDG
ACT
2019-01-19


 ヨーロッパのスタイリストたちのトリオ、三作目、2016年録音。
 メンバーそれぞれの母国で録音する趣旨だったらしく、イタリア“Mare Nostrum” (2007)、フランス“Mare Nostrum II” (2014)ときて、本作はスウェーデン録音。
 場所は違えど、三作とも穏やかで上品、スタイリッシュな音。
 ゆったりとテンポ。
 ドラム、ベースレスゆえの緩やかな浮遊感。
 美しいピアノ、洒落たムードと哀愁を醸し出すアコーディオン、クールなトランペット。
 過剰ではない、控えめでもない、絶妙なバランスのアンサンブル。
 オリジナル曲を中心としつつも、間に挟まれたMichel Legrandやイタリアの哀愁曲が中に溶け込んでしまう、美しい哀愁メロディの連続。
 ECMレコード的な毒気はなく、ひたすら美しくほのかに哀しい、そしてわかりやすい音。
 ベタかなあ・・・とか思ってもいても、はからずとも気持ちが穏やかになる、そんな音の流れ。
 ミュートされたトランペットやときおりのアコーディオンの疾走にジャズだなあ・・・と思いつつも、埃っぽさや汗臭さ、気難しさなしの徹底された洗練。
 さりげないのだけども、これでもかこれでもかと続くほのかな哀愁サウンド。
 紛れもなくスタイリッシュなのに、暖かで懐かしい感じがするのは、このバンドの色合いなのでしょう。
 三作、どれをとってもどこを切り取っても金太郎飴、穏やかで上品、優しくて暖かな音。
 冬が終わった暖かな日の昼下がりあたりにどうぞ・・・
 ・・・って、何年か前の三月にも同じようなこと書いてましたね
 この時候になると思い出す、そんな音のようです。


 

posted by H.A.



【Disc Review】”Flor” (2019) Gretchen Parlato

”Flor” (2019) Gretchen Parlato

Gretchen Parlato (Voice)
Marcel Camargo (Guitar) Artyom Manukyan (Cello) Léo Costa (Drums, Percussion)
Gerald Clayton (Piano) Mark Guiliana (Drums) Airto Moreira (Voice, Percussion) etc.

Flor
Gretchen Parlato
Edition
2021-04-09


 Gretchen Parlato、2021年発表、久々のリーダー作。
 “Live in NYC” (2013)、スタジオ録音では“The Lost And Found” (2010)以来なのでしょう。
 メンバーはブラジリアン中心、ギター、パーカッション、チェロをベースに、楽曲によってゲストが加わる編成、大御所Airto Moreiraも一曲。
 冒頭はブラジル曲。
 ゆったりとしたテンポ、チェロとガットギターが絡み合い、エレピ?が微かな彩をつける繊細な音。
 その中を泳ぐ吐息混じりのウイスパーVoice。
 なるほど、“Veja o Som” (2009-2010) Jovino Santos Netoや“Black Orpheus” (2013) Nilson Mattaなどでの名演がある、妖しいブラジル系の線か・・・、と思いきや、以降、少々印象が異なります。
 クラシックな感じ、往年のニューヨークコンテンポラリージャズな感じ、平和でフォーキーな感じ、ポップスな感じ、さまざまな色合い。
 楽曲もブラジル曲からポップス、J.S.Bach、その他諸々、多種多様。
 メインのカルテットのみでの演奏はクラシックとフォークが混ざり合う感じ。
 その印象が強いのですが、全部合わせて諸作よりも妖しさが薄れて、ポップスにも寄ったイメージでしょうか。
 クラシック&フォーキーな感じを新機軸として、ここまでのさまざまな色合いのショーケース、ってな感じかもしれません。
 いずれにしても、全編静かで柔らかで暖か、とても心地よい耳触り。
 小さな一声で周囲の空気を変えてしまう特別なVoice。
 妖艶ながら優雅で上品、優しく暖かな音。
 さて、今後、どの線で行くのでしょう?
 クラシカル&フォーキー路線か、ブラジリアン路線か、先端ポップスか、ジャズに戻るか?
 私的には妖しく幻想的な南米系に一票。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“Uma Elmo” (2020) Jakob Bro

“Uma Elmo” (2020) Jakob Bro

Jakob Bro (guitar)
Arve Henriksen (trumpet) Jorge Rossy (drums)

Uma Elmo
Jakob Bro
ECM
2021-02-12


 デンマークのギタリストJakob Bro、ECMレコードでの第四作。
 ECMではトリオ二作にワンホーンカルテットときて、本作はベースレス、トランペットとドラムとの変則トリオ。
 トランペットはECM御用達、ノルウェーの寂寥感の塊の人。
 顔ぶれ通り、静かで幻想的な音。
 全編ゆったりとしたテンポ、フリー、あるいはアルペジオが作る線の細いビート、自由にアクセントをつける静かなドラム。
 リバーヴに包まれたクリーントーンのギターが作るフワフワとした空気。
 そんな空間を漂う、サブトーンたっぷり、すすり泣くようなトランペットが奏でる物悲しいメロディ。
 前作“Returnings” (2018)と似た編成ですが、質感は異なります。
 トリオでの生暖かい感じから、温度、湿度が下がった印象の前作よりもさらに下がった感じ。
 トランペットがデンマークの人からノルウェーの人に北上したからか、ベースのまろやかな支えがないからか、それとも激情な場面はわずかのみ、抽象的な時間が増えたからでしょうか。
 いずれにしても、乳濁色な感じが薄らぎ、シャープになった印象。
 哀しく懐かしい空気感、静かにゆったりと進む時間はそのまま。
 そしていつもながらにドラマチックな展開。
 静かに立ち上がる序盤。
 混沌~緊張の中盤。
 安堵したような、あるいはやるせないような、複雑な結末の終盤。
 これまたいつもながらに哀しくも懐かしい映画の世界。
 ひんやりとした空気感と幻想、いかにも北欧な感じの空気感。
 そんな一作。


 

posted by H.A.



【Disc Review】“En el jardín” (2020) Yotam Silberstein, Carlos Aguirre

“En el jardín” (2020) Yotam Silberstein, Carlos Aguirre

Yotam Silberstein (Guitar) Carlos Aguirre (Piano, Rhodes, Acordeon, Synth, Bass, Guitarron, Bass Flute, Percussions)

EN EL JARDIN
CARLOS AGUIRRE
Inpartmaint Inc
2021-02-19


 イスラエルのギタリストYotam Silberstein、アルゼンチン、現代フォルクローレの親分Carlos AguirreのDuo。
 Yotam Silberstein、オーソドックスなコンテンポラリージャズなイメージが強いのですが、“Brasil” (2011)、Carlos Aguirre曲の採択、柔らかな音使い、などなど、南米志向な人ではあったのでしょう。
 楽曲を分け合い、ギターとピアノのDuoを中心として、楽曲によって他の楽器がオーバーダビングされる構成。
 キッチリとビートが入るジャズフュージョン寄りな演奏もあり、それら含めてShagrada_Medra系よりも都会的に洗練された感じですが、全体的な印象は現代フォルクローレの空気感。
 いずれにしても、漂いながらサラサラと流れていく静かな音。
 たっぷりのリバーブに包まれた美しいクリーントーンのエレキギター。
 Gilad Hekselman, Kurt Rosenwinkelに近い感じもあったのですが彼らほどには尖がらず、Toninho Horta, Pat Methenyな感じをもっとジャズに寄せた感じでしょうか。
 漂い、消え入るような音の流れ。
 ときおりのジャズな疾走。
 が、あくまで抑制された演奏。
 加えてときおり聞こえるいかにも南米なウイスパーなスキャットがとてもいい感じ。
 キッチリと背景を作っていくピアノ、エレピ、パーカッション、その他諸々。
 Aguirreさんはギターを引き立てる役回りに徹している感じでしょうか。
 南米Saudadeなメロディと空気感、少々の幻想とジャズの洗練が混ざり合う音。
 無国籍南米寄り、川沿い的だけど少々都会寄り。
 とても優しいコンテンポラリージャズ、ってな感じでよろしいのでは。


 

posted by H.A.



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